「DfMA シンポジウム vol.2 」後編 パネルディスカッション ―― リア・ローディング脱却の次の一歩

「DfMA シンポジウム vol.2 」後編 パネルディスカッション ―― リア・ローディング脱却の次の一歩

#イベントレポート

最終更新日:2026/06/29

KENGI 編集部

株式会社建築技術

KENGI 編集部

「DfMA シンポジウム vol.2 」後編 パネルディスカッション

本記事は、先進4社の発表をレポートした前編の続編です。4社の発表後に行われたパネルディスカッションを、シンポジウム現地録音(約69分)の全文文字起こしをベースに、発言の趣旨を損なわない範囲で要点を再構成しました。

コーディネーターの曽根氏のファシリテーションのもと、第1回講演者の渡辺氏による振り返りと現状認識の整理に続き、「役割」「社内基盤・BPO」「発注者」「第一歩」の4テーマで議論が展開されました。前編が「各社がどう実装したか」の報告だったのに対し、後編は「業界全体がどう次の段階に進むか」を構造的に論じる場となりました。

登壇者

講演者(パネラー)

  • 岩倉 巧 氏(株式会社安藤・間)
  • 中野 徳也 氏(株式会社長谷工コーポレーション)
  • 川戸 俊作 氏(株式会社カワトT.P.C.)
  • 山崎 芳治 氏(野原グループ株式会社)

第1回講演者:渡辺 健次 氏(株式会社ヴィック)

コーディネーター:曽根 巨充 氏(前田建設工業株式会社)/小笠原 正豊 氏(東京電機大学)

第1部:4社発表の振り返りと業界の現状認識(渡辺 健次 氏)

4社発表のレビュー

冒頭、渡辺氏から本日の4社発表の総括コメントが示された。

  • 安藤ハザマ(岩倉氏):製造業と建設業にまたがる設計データを柔軟に設計につなげる取り組み。パラメータで調整可能で再現可能な設計プロセスを実現し、製造過程の効率化・施工性の向上に貢献している。モデル=設計プロセスの再利用は、他の部位への転用可能性も感じさせる
  • 長谷工(中野氏):グループ会社として発注〜設計〜施工〜維持管理のプロセスを完結できる立場から、高度な情報連携によるプロジェクト全体最適化を既に相当部分で実現している。設計と施工の暗黙知のギャップをルール化して共有している徹底ぶりが印象的。DfMAと標準化はセットであり、そこで拾いきれないギャップをAIで補うMetiSの構想には強く共感
  • カワトT.P.C.(川戸氏):プレハブ配管の製作プロセスを高度にデジタル化し、専門知識を持たない人でも作業できる環境を全プロセスで徹底している意気込みが印象的。人材不足への一つの回答になっている。情報を「人に寄せる」という発想は、建設業でBIMが広がらない現状に対する示唆が大きい
  • 野原グループ(山崎氏):Build Appは数量拾い→材料手配→バラシ→プレカットまで、サプライチェーン全体のデータ連携とものづくりを商社の立場から実現。既存サプライチェーンの構造的問題に真正面から取り組んでいる

総じて、第1回が「問題提起(後工程で何が起きているか)」で終わったのに対し、今回は各社がそれぞれの立場でより具体的な成果を出しており、「希望が見えた」というのが渡辺氏の総括であった。

業界を取り巻く状況 ―― 気になっているテーマと変化の兆し

続いて業界の現状認識が示された。気になっているのは「DX投資の本格化による格差拡大」であり、特にサブコン・後工程側でギャップが広がっている実感がある。カワトT.P.C.や野原グループのBuild Appのように「できない人の領域はこちら側で巻き取る」アプローチが現実的な対応策になりつつあるが、DfMAのサプライチェーン連携がどう進むかは引き続き注視が必要である。

一方、変化の兆しも3点見えている。

  1. 発注者側からのBIM要求の増加:特に外資発注者(データセンターが顕著)で「BIMでやりなさい」という要請が明示的に出てきており、これによって後工程が整理されてきている実感がある
  2. 設計施工案件でのフロントローディング要請:現場側から、後工程でコストや工程が膨らむ現実を放置できないというモチベーションが上がってきている
  3. 一般建築への工業化施工・ユニット工法導入の期待:アイデア自体は古くからあるが、情報技術の進歩によって近年「かなりできそうだ」という期待が広がっている

第2部:モデレーター曽根氏による問題設定

曽根氏は議論の起点として、次のように整理した。

  • 生産性向上は10年来の課題だが、施工プロセスだけで生産性を上げるのは限界に来ている
  • BIMはソフトウェアを使うことではなく、情報を作成して次工程に伝えていく営み。効果を享受するには上流工程(設計・計画段階)への遡行が必要
  • リアローディング(施工に設計が引きずられる)→ フロントローディング(施工が設計に入る)→ DfMA(さらに前の計画段階から、製品の設計に入る)という階段を意識する必要がある

この構造認識のもとで、以下の4テーマについて順に議論が進められた。

テーマ1:各登場人物の役割はどう変わるべきか

RLから脱却するために、発注者・設計者・施工管理者・技能労働者の役割はどう変わるべきでしょうか。

岩倉 氏(安藤ハザマ)―― 構造設計者は「設計する」から「選ぶ」へ

構造設計者の役割自体が変わる。DfMAで提示したパラレル基礎梁の「型」が製品化されていれば、設計者は一から設計するのではなく、選択肢の中から選ぶ位置づけになる。構造計算などの業務は残るが、決め方自体に構造計算や製作限界の考え方を取り込んだ「型」を作っておけば、設計者が毎度ゼロから考えるよりも効率化につながる。生産・施工の効率化が、設計者の効率化と品質向上につながる方向で役割が再編される。

中野 氏(長谷工)―― 「ものづくりの楽しさ」もフロントローディングしたい

意匠設計者の立場から、興味深い反例として「リアローディングしたがる設計者」の存在を指摘。設備配管のルート変更などは、設計の立場からは可否が判断できず、「できる例もあるが施工する人によっては危険」と考えて後ろ倒しにし、実際に施工する人と対面して決めようとする人がいる。結果、そのタイミングで決まらないと施工に使えないBIMモデルになる。

したがって、作ることに責任を持てる人、施工知識のある人たちを代表する人が早いタイミングで参加できれば、その人なりのものづくりができる。中野氏は「ものづくりの楽しさもフロントローディングしたい」と表現した。所長や担当者のこだわり・現場で決める面白さを、標準を決めるときにみんなが集まって議論するものづくりへと前倒ししていくイメージである。

川戸 氏(カワトT.P.C.)―― 計画図の段階から入れば一元管理できる

現状、カワトT.P.C.への発注はゼネコンが施工段階で決まってから下りてくるが、デベロッパーとの直接対話も始めている。計画図の段階から入れれば、自社が作りやすいように設計でき、そこから納まり→施工図→組立図まで一元管理が可能になる。参画が早ければ早いほど現場全体が見やすくなる。

山崎 氏(野原グループ)―― 建具は実施設計終了時点で決まれば十分大きい

建具は特に生産設計に入ってから各工事間の調整が始まるため、本当にギリギリまで決まらない。実施設計が終わった時点で決まっていれば、ほんの半歩のフロントローディングでも随分違う。内装工事と建具工事の連携(枠→内装→扉)のような入り組んだ工程分けに対して、「枠工事を内装屋がやればいい」といった動きも昔からあるアイデアとしてあり、これが設計段階で決まっていれば大きい。

中野 氏(長谷工)―― サッシ標準化の先にあるもの

長谷工のサッシ情報記述ルール化について補足。外側がタイル張り・内側が内装付加仕上げ、といった条件からサッシ皿板の長さなどまでパラメータが自動で変化して工場に流れる仕組みが既にある。設計者はもっと間取りの設計に集中できるようになるという変化が生まれる。

小笠原 先生 ―― 設計の語源「designare」=「指示する」「選ぶ」

ここで小笠原先生がコメント。デザイン(design)の語源であるラテン語designareは「書く」ことよりも「指示する/指し示す」ことを意味する。製品や標準を選択していく作業が重要になっていく流れは、設計者=絵を描く人ではなく、適切な意思決定を適切なタイミングで行う人という本来の職能への回帰と捉えられる。「それこそがデザインなのかな、設計なのかな」という問いかけであった。

テーマ2:社内基盤・BPO・データベース

役割の変化を受けて、社内体制・アウトソーシング・データベース基盤の議論へ。

岩倉 氏(安藤ハザマ)―― 内製化 → BPO化の二段構え

まず内製化した理由は、やっていく中で問題点を把握しないと机上の空論になるから。現在は外注・BPO化も始めており、ベトナム現地法人でもBIM作成を進める予定。さらに、同グループのPC事業部自体に図面委託してInventorで作図する、ベトナム拠点にモデル作成を依頼するなど、外的要因と内的要因の両方をセットで設計できる体制を目指している。様々な事例を集めてDfMAの在り方にフィードバックしていく。

PCa工場の作図も外注会社が担う実態があり、そこにInventorを持ち込んだときの反応については「できることならやりませんかというアプローチを広げたい」と回答。Revit・Inventor化により内製化・属人化の問題を避け、仲間を増やすことが重要。

山崎 氏(野原グループ)―― BPOは「選択」であり、次の世界が見える

BPO化によって「人が育たなくなるのでは」という議論は必ず出るが、山崎氏は選択の問題と断言。どっちつかずで進めることが一番問題で、人口減少・全国での人集めが困難な時代に、「これは外に出す」と決めてしまえば、全国での能力アップについて一段上の議論ができる。業界全体として、生産性向上の取り組みの上位に「BIM+アウトソーシング」が挙がっている現状認識とも一致する。

ただし、一部世代からは「自分で使ったことがない人がBPOを戻したときにマネジメントできるのか」という懸念もあり、DfMAではより早い段階でマネジメントが重要になる。ゼネコン側がそれを受け入れる素地が減るリスクも意識する必要がある。

川戸 氏(カワトT.P.C.)―― 地方雇用を確保するビジネスモデル

カワトT.P.C.は依頼される側として、地方の雇用を確保するため素人の主婦や学生を集めて、教えたことをひたすら作業してもらうビジネスモデルを構築している。ゼネコンは空いた時間でより高度なことを考える、という役割分担。現状はCADベースでのお手伝いだが、将来的にはBIM連携・キープランでの発注業務自動化まで視野に入れている。デジタル化=BIMによって3次元データで扱えるようになったからこそ、こうした地方ビジネスが成立しているという指摘もあった。

中野 氏(長谷工)―― 南砂町 デジタルテクノロジーラボ

今日は紹介しなかったが、長谷工は南砂町に「デジタルテクノロジーラボ」を開設済み。10万戸分のBIMデータをクラウドに置き、設計者・施工者・管理者・販売者・住まう方・スマートシティ向けサービス事業者など、さまざまなステークホルダーに見てもらうことで新しい作り方やサービスが生まれるかを研究している。属性別のデータアクセス権設計も課題。物決め施設(リアルなマンション素材のショールーム)とデジタル空間が連動しており、選択した壁紙品番のような情報が工場・メーカー側に直接流れるデータ基盤になっている。

テーマ3:発注者に何を求めるか

中野 氏(長谷工)―― 「相見積もり」の仕組みがDfMAと噛み合わない

最も鋭い指摘がここで出た。ある決まった工法と設計の組み合わせがあるDfMAに対し、「設計が終わった時点で全ての見積もりができる状態で数社に相見積もりをとる」という従来の仕組みは全く合っていない。DfMAを先に決めるなら、相見積もりによるコストバウンドの可能性を放棄する選択を発注者がしなければならない。

これに対しては、発注者のメリットを明示するしかない。「うちの設計とゼネコンの工法、メーカーの製品でこう組めば、これだけ安くなる/品質が高くなる」という比較情報を、相見積もりのコストに対して提示していく。施工者やメーカーが再設計で工法メリットを出すパターン(ある種のリアローディング)もあるが、その際に発生した余計なコストを明示することで、次回は最初から決めてもらう流れを作る。

岩倉 氏(安藤ハザマ)―― 「DfMA前提の進め方を許容いただけますか」

発注者メリットは工期・品質・コストの安定感。ただしDfMAに即して発注者に求めたいのは、形を細かく決定してほしいということではなく、「標準化やDfMAを前提とした進め方を許容いただけますか」という意思決定である。「うちはDfMAに興味ない」と言われがちな中で、その前提を整理することが出発点。その先のメリットを享受してもらえれば、相見積もりの概念すら乗り越えられる。

渡辺 氏(ヴィック)―― 発注者の事業を「情報に落とし込む」職能

発注者の種類は多様だが、大きく2系統。

  1. インフラ発注者:事業にとって何が必要かを「情報」に落とし込めれば、早い段階から生産情報・施工情報を上げていくことが事業に対して有効か見えてくる。発注者側コンサルを始めているが、事業はわかっていても情報に落とし込めない発注者が多い、というもどかしさ
  2. デザイン案件の発注者:ブランド表現の複雑形状(ねじりのあるガラスパネル等)のケースでは、「ここまでひねるといくら」というコストインパクト情報を設計段階から提示することで、発注者と設計者が判断できる関係を作れた経験がある

共通するのは「事業として何が必要か」と「それに対するコストインパクト」を紐づける付き合い方。直接発注者と契約する機会は増えてきており、ISO 19650のような流れで「事業とBIMを結びつけないと」という動きが始まっている。サブコンの下流で戦い続けるのではなく、発注者側に入り込んでいく方向で業界全体が動くべきであるという見通し。

山崎 氏(野原グループ)―― CM的な業界の育成

現状、野原グループは発注者との直接接点はごく一部。ただし海外との比較で「施主が建設・建築のことをよくわかっていない」という問題は大きい。設計変更が起こったときに、下流でどれだけ辻褄合わせの苦労が発生しているか、誰かが逆ザヤで飲み込んでいるか、といった実態への理解が必要。そのために「CM的な業界が日本でどう育つか」「誰が担うか(国か、民間か)」が次の問題。渡辺氏のようなコンサル的な立ち位置がもっと育つことが鍵。

川戸 氏(カワトT.P.C.)―― 「種類変更」が製造サイドを困らせる

現場で明確な数量は出せているが、困るのは箇所数の増減ではなく種類の変更。受注後に種類が変わることが多く、営業→本社と連絡が走って急いで段取りをやり直すバタバタが残る。これはリアローディング的な動きそのもので、低減されれば効率がさらに上がる。

小笠原 先生 ―― デジタル化で「オープンブック」に近づく未来

海外からの視点として、デジタル化によって数量が隠せなくなってきている時代に入りつつある。従来「表の見積もりと裏の見積もり」があったような状況がなくなり、海外でいうオープンブックに近づく。情報の流れがクリア・シンプルになれば、余計な手間を乗せる必要がなくなり、コストとプライスが近接する未来が見えてくる。

テーマ4:第一歩を誰が踏み出すべきか

最後のテーマとして、「誰が最初の一歩を踏み出すか」が問われた。

山崎 氏 ―― インフォメーションを早く決めて変えないこと

後工程からすると、変更こそが一番苦しい。BIM=Building Information Modeling には「モデリング」と「インフォメーション」の二つの意味があるが、現状は皆「モデリング」側に意識が偏っている。インフォメーションを早く決め、決めたら変えないこと。「どこまでを決めるか」は業界として合意する必要があるが、それさえできれば下流は打ち手を見込まずに済み、正しい見積もりと正しい仕事の循環が生まれる。「誰がやるか」は特定できないが、みんながそれぞれの役割で取り組むしかない。

川戸 氏 ―― BIMの浸透を進める

BIMに触れ始めて7〜8年、認知度は当時に比べて格段に上がった。さらに浸透させれば、BIMをどう使えば手戻りなく設計・現場が回るかが共有できるはずで、そこを目指したい。

中野 氏 ―― 設計者が「指示計画」する職能に立ち戻る

フロントローディングは前工程に負荷をかける以上、お金が伴う(発注者が払い、後工程でコスト削減として対価を得る)。設計者の語源 designare(指示計画する人)という観点から考えると、FLによって生まれる価値・削減される後工程コストを説明し、自分が実現したい建物のために世の中の手法を熟知して説明・説得し、そこに向かわせるのは設計者の職能であるべき。渡辺氏のようなコンサル的アプローチと最終的には重なっていく。

岩倉 氏 ―― 元請・製造側(生産側)自身が第一歩を踏み出すべき

「誰が第一歩か」に対する岩倉氏の明確な答えは「私たち自身(元請と製造側の生産側)」。理由は、DfMAの効果と限界を最も具体的に語れる立場だから。いいところだけでなく苦労したところ・悪かったところも全部説明できる。「単なる成功事例のプレゼンではない」ことを伝えられるのが生産側の強み。前編講演で触れた属人化の問題は、「誰でも同じ判断ができる仕組み」への昇華で解けるはずで、それこそがリアローディングからの脱却の本当の一歩になる。

渡辺 氏 ―― みんなが始めればいい/発注者にはポジティブな問いかけを

誰か一人ではなくみんなが始めればいい。設計者なら施工を・製作を知りに行く努力が必要で、それは自分の仕事をポジティブに捉える営みにもなる。ヴィックもデータ制作から始まり、工場を見に行き、設計を学ぶ中で能力を拡張してきた。

発注者へのアプローチは重要だが、「後工程が困るからお願いします」という問いかけは効果が薄い。最近よく話すのはSuicaの例え――元は便利な電子切符だったものが、今や多機能化してビジネス拡張している。建築でも情報技術と組み合わさることで、従来の使い方を超えた新しい使い方・ビジネス展開が生まれる可能性がある。「それを一緒に考えませんか」というポジティブな問いかけの方が発注者に響く。

曽根氏からの追加の問い(「BIMのMはマネジメントだという話を1回目でされていたが、マネジメントの第一歩は?」)に対し、渡辺氏は「マネジメントにはよりどころ・ルールが必要。BIMの世界ではEIR(Employer's Information Requirements)がそれにあたる。発注者から発行され、誰が・いつ・どんな情報を作り、最終的にどう返すかが決まる世界を、みんなで作っていく」と応答。一方で、「EIR」のような専門用語を使うこと自体がハードルになる側面もあり、川戸氏の話に出てきた「人に情報を寄せる(専門用語に慣れさせない)」姿勢も重要、という自戒で閉じた。

小笠原 先生 ―― 個別最適化から全体最適へ、インターフェース設計が次の山

総括として小笠原先生は次の見立てを示した。

  • 第1回が問題提起だったのに対し、今回は各社が予想より相当頑張っており、個別最適化で上流への訴求がうまくいくようになってきた
  • 川戸氏の話に出た「給配水の最適化が進むと電気も意匠も依頼される」という展開や、各社で起きている波及は、個別最適化からの越境が始まりつつある兆候
  • アカデミアの立場から整理すれば、個別最適化が機能し始めた次に重要なのは自分のモジュールと他ステークホルダーのモジュールとの間のインターフェース設計
  • インターフェース設計 = 標準化に他ならず、それをどう言語化・明示化して共通ルールに落とすかが次の山になる

所感

パネルディスカッションは、前編の各社発表を単なる成功事例の紹介で終わらせず、「構想から実装へ」「個別最適から全体最適へ」の次の一歩を論じる場として機能していた。特に印象に残った論点は以下。

  • 「リアローディングしたがる設計者」という中野氏の逆説的な指摘と、それに対する「ものづくりの楽しさもフロントローディングする」という処方箋
  • 「相見積もりの仕組みとDfMAは噛み合わない」という中野氏の鋭い指摘。DfMA普及のボトルネックが契約慣行にあることを端的に示し、発注者教育と契約制度改革の両輪が必要であることを露呈した
  • 岩倉氏の「第一歩は生産側(元請・製造)自身」という明快な回答。DfMAの効果だけでなく限界も語れる立場こそが普及の推進役になる、という見解は説得力があった
  • 渡辺氏のSuicaの例えによる発注者アプローチ論。「困るからお願い」ではなく「一緒に新しい可能性を考えませんか」というポジティブフレーミングの重要性
  • 小笠原先生の「個別最適化 → モジュール間インターフェース設計」という次の論点提示。第3回があるならここが中心になるだろうと予感させる締めくくりだった

前編の4社発表が「各社がどう実装したか」の報告だったのに対し、後編のパネルは「業界全体がどう次の段階に進むか」を構造化して論じる場になっており、両編を通して読むことで本シンポジウムの立体的なメッセージが見えてくる。

※本レポートはシンポジウム現地録音(約69分、m4a)を Whisper large-v3 で全文文字起こししたデータを一次情報として、発言の趣旨を損なわない範囲で要約・再構成した。発言者名は登壇者一覧スライドの表記に従っている。