積載荷重の考え方|実務経験者が解説

積載荷重の考え方|実務経験者が解説

#構造設計のイロハ

最終更新日:2026/07/03

沖原 圭佑

Fortec Architects株式会社

沖原 圭佑

大手建設会社に11年間、構造設計者として従事。工場・研究所・教育関連オフィス・ホテルなど、様々な建物種別に携わった。その後、ライティング技術を身に付けて建築ライターとして独立。建築・不動産・建設DXなど、幅広い建設・建築コンテンツの執筆を手掛けながら、ベンチャー企業の施工管理アプリ開発のアドバイザリー業務なども行っている。現在はFortec Architectsの構造エンジニア兼建築ライターとして活動中。

積載荷重の考え方|実務経験者が解説

積載荷重の設定は、構造計算の根幹となる重要な要素です。構造設計の経験が浅いうちは建築基準法や実例を参考にしながら決めることが多いかもしれませんが、室用途によっては実況に応じて適切に設定する必要があり、プロジェクトの初期段階からしっかりと整理しておくべき項目といえます。

そこで今回は、積載荷重の基本的な考え方から、建築主との合意形成の重要性、設定の仕方までをわかりやすく解説します。ぜひ参考になさってください。

積載荷重とは

積載荷重は、構造設計で扱う長期荷重のひとつです。その他の荷重と合わせて確認しておきましょう。

【長期荷重】
・固定荷重:建物自体や、床・壁等の仕上げ、間仕切り壁などの重さ
・積載荷重:人間や機器・什器などの重さ

【短期検討】
・地震荷重:地震によって発生する力
・風荷重 :風によって発生する力
・積雪荷重:積雪によって発生する力

固定荷重と積載荷重は、それぞれ英語で「Dead Load」「Live Load」と表現され、前者は建物を使用している間に変化しないもの、後者は変化するものとされています。例えば、部屋を構成する間仕切り壁は動かすことがないので固定荷重、人間や家具は移動するので積載荷重として設定されます。

固定荷重は自重や仕上荷重を集計することで明快に設定することができますが、積載荷重は建物の使われ方によって変化するので、実際の使われ方を想定して適切に設定することが大切です。

建築主とのコミュニケーション、合意形成が大切

建物の実際の使われ方を正しく把握するためには、建築主とのコミュニケーションが重要です。以下に示す項目を参考にしながら与件を整理していきましょう。

・部屋の用途:住宅、オフィス、倉庫、設備機械室など
・想定収容人数:固定席の映画館(密度小)、座席のないライブ会場(密度大)など
・機器等の荷重、レイアウト:設備・生産機器、本棚の高さ、倉庫の保管物など
・車両などの出入り :搬入車両やフォークリフトなど

例えば、部屋の用途が「書庫」と指定された場合でも、本棚の高さによって想定すべき積載荷重は大きく異なります。また、「研究所」を設計する場合においても、顕微鏡などの軽量な機器があれば十分なケースもあれば、数十トンの研究設備を並べて設置するケースもあります。

このような実況は、建築主とコミュニケーションを取らなければ明確になりません。建築主からするとどのような情報を渡せばよいかわからないため、構造設計者からアプローチして情報を集める必要があります。例えば、「工場部分の荷重設定をするため、機器リストとレイアウトがわかる資料をください」「この倉庫で想定している保管物と積み上げ高さを教えてください」など、必要な情報を得られるように具体的な質問を投げかけるように意識してみてください。

基本計画の段階で上記のヒアリングを行い、建築主と合意した上で基本設計、実施設計に取り組めれば、安心して構造設計を進めることができます。

更新を怠ると大きな手直しが発生する

筆者は、設備機械室の積載荷重の更新を怠ったために、確認申請を提出する直前に部材を設計し直すという手戻りを経験したことがあります。設備機械室に設置する機器は、設備設計者の計画によって設計中に変わることがあるのですが、その重量を確認してなかったために想定していた積載荷重を超えてしまい、部材の耐力が不足してしまったのです。そのときは小梁の変更のみで対応できましたが、柱や大梁の部材変更まで生じていたら、確認申請直前に大きな手直しが必要になっていたでしょう。

このようなリスクを減らすためには、プロジェクトの進捗に合わせて積載荷重を見直し、更新していくことが大切です。特に設備機器、生産機器、水槽関連などは荷重が変わりやすいため、留意しておきましょう。

積載荷重の決め方①|建築基準法などを参考にする

次に、積載荷重の決め方を紹介します。ひとつ目の方法は、建築基準法などに記載されている一般的な数値を参照することです。以下のような資料が参考になります。

【積載荷重の設定で参考になる資料】
・建築基準法施行令第85条
・建築構造基準の資料(国土交通省官庁営繕部)
・文部科学省建築構造設計指針・同解説(文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部)
・建築物荷重指針・同解説(日本建築学会)

使う機会が多いのは建築基準法と国土交通省官庁営繕部の資料ですが、文教施設の場合は文部科学省の資料、特殊ケースの場合は日本建築学会の指針が参考になるでしょう。

積載荷重の決め方②|実況に応じて決める

もう一つの積載荷重の決め方は、実況に応じて決めることです。実際に部屋を利用する人や設置する機器の荷重を集計し、適切な面積で均すことで積載荷重を設定できます。以下にスラブ・架構・地震用積載荷重の面積の取り方の一例を示しますので、参考になさってください。

【スラブ用積載荷重】

【架構用積載荷重】

【地震用積載荷重】

スラブ用、架構用、地震用の順に支配面積が大きくなっていくため、面積当たりの荷重が均されて積載荷重は小さくなっていきます。モノが高密度になるほどそれぞれの積載荷重の差は小さくなっていくので、物流倉庫のように隙間なく物をレイアウトするような場合は架構用、地震用の積載荷重を小さく設定しすぎないようにしましょう。

おわりに

構造計算を正しく行うためには、適切な荷重設定が重要です。なかでも積載荷重はユーザーの使い方によって実際の大きさが変わるので、建築主とコミュニケーションを取りながら実況に応じた数値を設定する必要があります。基本計画段階から積載荷重を意識し、手戻りのない構造設計を目指しましょう。