ホールライフカーボン・サーキュラーエコノミーと建築設備はどう関われるか(1)

ホールライフカーボン・サーキュラーエコノミーと建築設備はどう関われるか(1)

#設備設計のイロハ

最終更新日:2026/10/26

村井絢香

株式会社日建設計総合研究所

村井絢香

大手建設会社にて設備設計(電気・機械)に7年、設備施工管理に3年従事。大規模病院、歴史的建築物の復興、放送局、大規模再開発等のプロジェクトを担当しながらZEB設計ガイドライン・設計ツールの社内開発にも携わる。その後スタートアップ企業に転職。設備部門の立ち上げを行い、事業主として設備PMおよび設備設計に2年従事。設計・施工・事業主の3つの視点を強みに、現在は日建設計総合研究所の研究員として環境・エネルギー分野の調査研究とコンサルティングを行っている。

建築設備界隈の皆様、毎日のお仕事お疲れ様です。前回のコラムでAIJ大会論文から設備設計のトレンドを紐解きました。

その中でも近年急上昇中のホールライフカーボン(WLC)、サーキュラーエコノミー(CE)と建築設備はどう関われるか?に関して考えようと思います。本稿ではまず、前提の整理をしていきます。

そもそもWLCとCEってどう違うんだっけ?

目的の違い

  • WLCは気候変動の影響評価を目的としています。建設・使用・解体段階で生じるカーボンを合算したもので、ここでいう「カーボン」は建築材料の原料調達から廃棄までの各工程と、運用時のエネルギー使用、フロン等の冷媒漏洩などに伴って生じる温室効果ガスをCO2換算したものです。
  • CEは環境影響の最小化と経済安全保障、産業競争力の強化を目的としています。資源を廃棄せずに長く使い続けたり循環利用したりすることが目標です。これによって一次資源(天然資源)の投入量を減らして環境影響を小さくするとともに、資源の多くを輸入している日本においては経済安全保障のレジリエンス強化にもつながります。

評価対象の違い

  • WLCは「建物のライフサイクルで生じる温室効果ガス排出量」を対象としているのに対し、CEは「投入資源そのものの量や循環の度合い」を対象としています。(CEの評価指標には再生可能エネルギーの利用率を含めたものもあります。詳しくは次回以降のコラムにて)。
  • つまり、CEを推進することで一次資源の投入量が減ったり製品寿命が延びたりした結果、WLCが減る、という関係性です。ただし、常にこの関係になるとも限らないのでWLC、CE両方を見て最適解を判断する必要があります。

国内の制度や政策の違い

WLCの制度や政策

  • WLCは国土交通省主導で制度化が進んでいます(制度上の名称は「ライフサイクルカーボン」)。2026年7月に法改正が成立し、2028年度の開始を目指して一定規模・用途の建築物(5,000㎡以上の事務所を想定)に着工前のライフサイクルカーボン評価結果の届出が義務付けられる予定です。

CEの制度や政策

  • 建築物におけるCEはまだ制度化の段階になく、国においては製品単位の循環型ビジネスの推進(経産省)、社会全体での資源循環利用の推進(環境省)、建設リサイクルや再生資材の利用推進(国交省)が行われている状況です。今後の動きを要チェックですね。建築物単体のCEは民間企業の先行的な取組が出てきており、建材や建築物の評価指標やサーキュラーデザイン手法の検討が行われている段階です。

次回予告

近年注目度上昇中のWLCとCEに関して、定義や制度の違いに関して整理しました。
次回以降でそれぞれの評価指標や建築設備との関わり方についてお話していく予定です!

参考資料

1.環境省 資源循環ポータルサイト

2.環境省 循環型社会形成推進基本計画

3.国土交通省 建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会

4.国土交通省 国土交通白書2025「循環型社会の形成促進」

5.経済産業省 事務局資料(第13回 産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会)

6.竹中工務店 サーキュラーデザインビルド

7.大成建設 T-FIELD/SATTE

8.積水ハウス 東京大学、東京理科大学、清水建設、積水ハウスの産学連携 サステナブル建材に関する研究会を発足

※本記事の内容は筆者個人の見解であり、所属組織の調査研究に基づく公式な見解を示すものではありません。また、特定のサービスや商品のプロモーションを目的としたものでもありません。

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