ITツール導入・定着の進め方|現場に使ってもらうために大事なこと

ITツール導入・定着の進め方|現場に使ってもらうために大事なこと

#情シス・DX推進担当のイロハ

最終更新日:2026/06/14

中島貴春

株式会社フォトラクション

中島貴春

ゼネコン勤務を経て建設テックスタートアップに参画。建設業向けSaaSの開発・導入支援に従事する中で、情シス・DX推進の現場を数多く見てきた。テクノロジーと建設業の架け橋として、業界全体のデジタル変革に取り組んでいる。

システムを選んで穟議を通したら、次は導入・定着です。実はここが最も難しい山場。「導入したけど使われなかった」という失敗を防ぐための、パイロット導入から全社展開までの進め方、現場チャンピオンの育成、定着度の測り方を解説します。

1.導入計画の立て方——パイロット→段階展開→全社展開

新しいITツールを全社に一気に導入するのはリスクが高いです。お勧めは「パイロット→段階展開→全社展開」のステップで進めることです。

パイロットでは、協力的な1〜2現場で試験導入します。ここでの目的は、現場での実用性を検証し、運用上の課題を洗い出すことです。パイロット現場の選び方も大切で、ITに理解のある所長がいる現場を選ぶとスムーズに進みます。

段階展開では、パイロットの結果を反映した上で、対象現場を徐々に広げていきます。一度に全部ではなく、支店単位や工事種別で広げるのが現実的です。

全社展開に至るまでに、半年から1年程度かかることも珍しくありません。焦らず着実に進めることが大切です。

2.展開側が「戦略と意思」を持つ——現場に思いを伝える前提

ここまで導入の進め方を見てきましたが、その土台として何より大切なのが、展開する側(情シス・DX推進担当)自身が「なぜこのツールを入れるのか」という戦略と意思を持っていることです。手順をなぞる前に、ここが固まっているかどうかで結果が大きく変わります。

「経営層に言われたから」「ベンダーに勧められたから」という理由だけで動いていると、その姿勢は必ず現場に伝わります。導入目的を聞かれても自分の言葉で語れず、現場の「これって本当に必要なの?」という問いに答えられない。結果として、現場に思いは伝わらず、ツールは“やらされ仕事”として形だけ使われることになります。

さらに危険なのは、展開側が意思を持たないまま進めると、経営層やベンダーの「言いなり」に近い形になってしまうことです。提案されたものをそのまま流すだけでは、自社の業務や現場の実態に本当に合っているかという判断が抜け落ち、会社としての主体性——「自分たちはこの課題をこう解決する」という軸——を失ってしまいます。これは、目先の導入が進んだとしても、会社にとって大きな損失です。

だからこそ、展開を始める前に、自分の中で次の問いに答えておきましょう。

  • このツールで、自社のどの課題を、どう解決したいのか(目的)
  • 現場にとってのメリットは何か、それを自分の言葉で説明できるか(翻訳)
  • 経営層やベンダーの提案を、自社の実態に照らして取捨選択できているか(主体性)

この戦略と意思があって初めて、次に述べる「巻き込み」が機能します。逆に言えば、ここさえ固まっていれば、多少の反発や運用トラブルがあっても軸がぶれずに進められます。ツールを入れること自体が目的化せず、「自社をどうしたいか」が先にある——この順番こそが、展開側に求められる最も大事な姿勢です。

3.「使われないツール」にしないための巻き込み方

導入の最大のリスクは「使われない」ことです。これを防ぐには、現場の人たちを「巻き込む」ことが不可欠です。

まず、導入の目的を明確に伝える。「会社が決めたから使ってください」ではなく、「これを使うと皆さんのこういう仕事が楽になります」と現場目線でメリットを伝えます。

次に、現場チャンピオンを育成する。各現場や各部署に「このツールに詳しい人」を作ることで、情シスに直接聞かなくても現場内で解決できる体制ができます。チャンピオンには、ITスキルよりも「周囲に教えるのが好きな人」を選ぶのがコツです。

設備設計のイロハでも語られていますが、段取り力と気遣いはツール導入でも同じくらい重要です。現場の忙しい時期を避けて研修を設定する、簡単な操作マニュアルを用意する、困ったときの連絡先を明確にする——こうした配慮が定着率を大きく左右します。

4.定着度の測り方とPDCA

導入したら終わりではありません。定着度を測り、改善し続けることが重要です。

定着度の指標例:ログイン率(実際に使っている人の割合)、データ入力率(期待されるデータが入力されているか)、問い合わせ件数(減少傾向か増加傾向か)、ユーザー満足度(簡単なアンケート)。

これらの指標を定期的に確認し、課題があれば追加研修やマニュアル改善などの手を打ちます。導入後3ヶ月、半年、1年のタイミングで振り返りを行い、経営層への報告にも活用しましょう。「導入してこれだけの効果が出ました」と示せることが、次のIT投資への布石にもなります。

※本記事の内容は筆者個人の見解であり、所属組織の公式な見解を示すものではありません。また、特定のサービスや商品のプロモーションを目的としたものでもありません。