「ASIBA ATLAS 2026」開催 意志あるエコシステムの現在地を共有

「ASIBA ATLAS 2026」開催 意志あるエコシステムの現在地を共有

#イベントレポート

最終更新日:2026/09/11

KENGI編集部

株式会社建築技術

KENGI編集部

2026年8月1日(土)イベントレポート

クリエイティブ領域のプロジェクトを支援する一般社団法人ASIBAは、8月1日「ASIBA ATLAS 2026」を開催しました。当日は、2年間の活動期間を経て、リブランディングを行ったASIBAの現在地と今後の活動について紹介するとともに、パートナー企業らと共にASIBAのクリエイションプロセスを実際に体感する参加型ワークショップが行われました。

オープニングでは、参加者がスマートフォンからコメントやスタンプを送ると、リアルタイムでスクリーン上に表示されるASIBA独自の仕組みが紹介されました。実際に参加者がスタンプを送り、会場から次々とリアクションが寄せられるなか、イベントがスタートしました。

「ASIBA ATLAS 2026」会場の様子

「ASIBA ATLAS 2026」会場の様子

意志あるエコシステムへ変化するASIBA

はじめにASIBA代表理事の二瓶雄太氏が「意志あるエコシステムの現在地」と題し、今回のリブランディングに至った背景と、ASIBAがこれまでどのように活動を広げてきたのかが紹介されました。

ASIBAの活動は約3年前、建築学生など若い世代を対象としてアイデアの社会実装を目指すインキュベーションから始まりました。それぞれが取り組むプロジェクトを持ち寄り、お互いのプロジェクトをブラッシュアップして社会実装を目指していくプログラムからスタートしましたが、次第に建築だけでなく、次第にアートやデザインさまざまな領域からプロジェクトが集まるようになりました。

数年間このような活動を続けるなかでは、プロジェクトが独立し、事業化したり会社やプロダクトが生まれたりする動きも現れ始めました。また、ASIBAを通して出会った人同士が新たなチームを組み、別のプロジェクトを立ち上げるなど、それぞれの活動が互いに交差する関係も生まれています。

「ASIBA ATLAS 2026」リブランディングに至った経緯を語る二瓶雄太氏

リブランディングに至った経緯を語る二瓶雄太氏

一方、期間を区切ったインキュベーションだけでは、アイデアをプロトタイプにし、さらに社会へ実装していくまでを支えるには限界があります。そこでASIBAでは、企業パートナーと連携し、実証のためのフィールドや技術の提供を受けながらプロジェクトを進めるなど、社会実装に向けたプロデュース機能を広げてきました。

さらに、行政や自治体との連携窓口を設け、廃校を活用したアートプロジェクトや自治体と共同したプロダクトの実証など、都市や地域をリアルなフィールドとした取組みも進めています。規模の大きなプロジェクトでは資金面も課題となることから、クリエイティブな活動を支える新たなファイナンスの仕組みについても模索しています。

今年4月からは新たな活動拠点も設けました。これまでオンラインや借りた場所を中心に活動してきたASIBAに、人が継続的に集まる場所が生まれたことで、そこでの出会いから新たなチームやプロジェクトが生まれることも期待されています。

また、大学や企業との連携も始まり、プロジェクトの成果や効果を研究として検証する取組みも進めています。

こうして活動領域が広がるにつれ、「ASIBAとは何か」をインキュベーションという言葉だけで説明することが難しくなってきました。今回のリブランディングでは、ASIBAをさまざまな人やプロジェクト、支援機能が関係し合う「探究するエコシステム」として捉え直しています。

さらにASIBAでは、これまでに生まれた数多くのプロジェクトを横断的に読み解く「編集会議」を行っています。一つひとつの活動を見るだけではなく、複数の実践的なプロジェクトから学び、そして共通する問いを探し、それらを結び直すことで、ASIBAが今後探究していくアジェンダ「遊びと人間」「公共と市民」「暫定と生活者」「技術と市民」を発見していく会議です。

会場で配布されたリサーチブックは、この「編集会議」をもとにつくられました。これは、通常のプロジェクトの活動記録ではなく、それぞれのプロジェクトとともに、そこに関わったメンバーや関係者の言葉、思考、経験を掲載しており、多様な考えを持つ一人ひとりによってASIBAが形づくられていることが見える構成となっています。

会場で配布されたリサーチブック

ネットワークやプラットフォームのような無色透明でフラットな存在ではなく、ASIBA自身も意思や姿勢を持ちながら活動していくという考えも示されました。今回のリブランディングは、広がってきた活動を整理するだけでなく、ASIBAが何を問い、どのような方向へ進もうとしているのかを示すものとなっていると締めくくりました。

言葉を組み替えてプロジェクトを生み出す

続いて、参加型ワークショップ「プロジェクト編集工房ASIBAへようこそ」が行われました。これは、リブランディングにあたってASIBAが行ってきた「編集会議」の一部を、参加者が体験するものです。

ワークショップの冒頭では、「編集」について、何もないところから新しいものを生み出すのではなく、すでにあるものや条件を動かし、組み替えることで新たな関係を見つけていく実践ではないかという考え方が紹介されました。

参加者はグループに分けられ、ASIBAのアジェンダやこれまでのプロジェクトから抽出した言葉が記されたカードが配られました。その中には空欄のカードが2枚。まず、それぞれが問いに対して思い浮かんだ言葉を書き込み、グループ内で共有。その後、テーブルにカードを広げ、一人ずつ気になる言葉を選びながら、複数の言葉を組み合わせて架空のプロジェクトを考えていきました。

カードを並べて架空のプロジェクトつくるようす

カードを並べて架空のプロジェクトつくるようす

ここで重視されたのは、最初から完成したアイデアを考えることではありません。一見関係のない言葉も含めてさまざまな組合せを試し、そこから思いがけないアイデアを膨らませていきます。

後半では、生まれたアイデアのなかから一つを「妄想プロジェクト」として選び、「自分ならどのように関わりたいか」「誰と一緒に取り組みたいか」までを考えました。

会場では、参加者がカードを囲み、それぞれ異なる視点から言葉を出し合いながらプロジェクトを組み立てていきました。ASIBAがリブランディングの過程で行ってきた「編集」を、参加者自身が体験する機会となりました。

参加者グループの作成した妄想プロジェクト

ASIBAがこれから目指すもの

ワークショップ終了後には、共同代表の森原正希氏から、ASIBAのこれまでを振り返るとともに、今後取り組んでいきたい展望が紹介されました。

ASIBAの今後の展望を語る森原正希氏

ASIBAの始まりは、大学の研究室を使った小さな勉強会でした。自分たちだけで何かをするのではなく、仲間の夢も自分の夢のように楽しみながら、社会に対して新しいことに挑戦していく。そうした活動を続け、これまでに生まれたプロジェクトは約80以上にのぼります。

そのなかでASIBAが考えてきたのが、「人はなぜ新しいものをつくり、表現しようとするのか」という問いです。新規性や競争力、仕事や暮らしのためだけではなく、新しい可能性や望ましい未来の姿を想像し、それを社会や他者と共有するために「つくる」という行為があるのではないか。その考えをもとに、今後取り組んでいく3つの方向性が示されました。

一つ目は「クリエイティブプロデュース」です。アイデアや表現の可能性を持つ人がいても、それを受け止め、社会へつなぐ環境が十分にあるとは限りません。ASIBAでは、クリエイターと社会をつなぐだけでなく、プロジェクトの立上げからファイナンス、事業化、社会実装までに関わり、「仕事を生む仕事」を担うことを目指します。

二つ目は、実践を通して新しい現象をつくりながら行うR&Dです。社会課題やコンセプトを考えるだけではなく、実際に身体を動かし、社会のなかで試し、失敗しながら検証していきます。建築で模型などによるスタディを繰り返しながら設計を探るように、社会に対しても仮説を立て、実践することで新しい可能性を探っていくリサーチのあり方を社会に実践していきます。

三つ目は、「リスクと可能性を分け合う」仕組みづくりです。若い世代が新しいことに挑戦しようとしても、資金や生活の負担を抱えながらリスクを取ることは容易ではありません。そこでASIBA自身も資金やリソースを投入し、企業などとも連携しながら、プロジェクトを実現して社会へ送り出す仕組みを模索しています。

最後には、発注する側とされる側という関係だけではなく、さまざまな人が「一緒につくる」ことの楽しさを共有できる環境をつくっていきたいとの思いが語られました。

インキュベーションから始まり、多様なプロジェクトや人がつながるエコシステムへと活動を広げてきたASIBA。「ASIBA ATLAS 2026」は、リブランディングによってその現在地を示すとともに、参加者とともに次の活動の可能性を考える場となりました。