
KENGIセミナー神奈川#6「中大規模木造建物の施工管理の注意ポイント 2026年10月14日(水)イベントレポート
最終更新日:2026/11/02

株式会社建築技術
KENGI編集部
「KENGIセミナー神奈川#6 中大規模木造建物の施工管理の注意ポイント」が、2026年10月14日(水)に、神奈川県横浜市中区の「ICON関内(YOXO BOX)」で開催されました。
中大規模木造建築の普及が進む一方、木材特有の材料特性への理解不足や、現場で誤差を吸収しにくい構造特性に起因する施工上の課題も指摘されています。本セミナーは、月刊『建築技術』2026年9月号の特集と連動したプログラムであり、最前線で活躍する2名の登壇者によって、木材・木質材料の基礎知識と、建方から本締めまでの施工管理の勘所が語られました。
本記事では、中大規模木造建物の品質を確保するための材料知識と施工管理の注意ポイントを、各講演の内容に沿ってレポートします。

ICON関内(YOXO BOX)
【登壇者一覧】
青木謙治氏(東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授 青木謙治氏)
井塚茂氏(SMB建材株式会社 木構造事業本部 エンジニアリング部 部長代理 井塚茂氏)
冒頭、株式会社建築技術 阿部氏より開会の挨拶とともに、本セミナーの趣旨が説明されました。

株式会社建築技術 阿部氏による挨拶
第一講演:「中大規模木質構造の設計・施工に必要な木材・木質材料の基礎知識」青木謙治氏
第一講演では、中大規模木造の設計・施工でミスを防ぐ前提となる木材の異方性・含水率・強度特性と、代表的な構造用木質材料の特徴が明かされました。
⽊造建築の特徴
青木氏はまず、木造建築の特徴として、木材の部材破壊がめり込みを除いて脆性的になりやすく、構造物の靱性を接合部で確保する必要がある点を整理しました。接合部の初期ガタ(滑り)や「半剛接合」の剛性評価に加え、一定荷重下でたわみが増大する「クリープ」や、吸脱湿によって変形が拡大する「メカノソープティブ」への配慮が求められるため、部材の含水率管理と雨対策が重要になると語られました。
⽊材の基本的な性質
木材の基本的な性質として最も重要なのが「方向性」です。木材は繊維方向(L)・放射方向(R)・接線方向(T)で性質が大きく異なり、R・T方向の強度は繊維方向の1/10~1/20程度、ヤング係数はおおむね10:1:0.5の比率となります。含水率が繊維飽和点(25~30%程度)を下回ると強度が上昇する一方、L:R:T=0.5~1:5:10の比で収縮が生じ、反りや割れの原因になることが示されました。髄から15年程度の未成熟材はヤング係数が低いため、「心持ち材」が必ずしも良材とは限らないとの指摘もありました。
強度の考え方では、節や割れを含む実大材は寸法効果の影響を受け、無欠点小試験片の「引張>曲げ>圧縮」から「曲げ≧圧縮>引張」へと強度の順序が逆転することが解説されました。基準強度は平均値ではなく5%下限値で定められるため、ばらつきの小さい材料ほど有利になります。また、長期1.1/3、短期2/3といった許容応力度の係数は、荷重継続時間と強度の関係を示す「マディソン・カーブ」に基づいていることが明かされました。
構造⽤⽊質材料の種類と特徴
構造用木質材料については、製材・集成材・LVL・CLT・面材の特徴と設計・発注上の留意点が紹介されました。無等級材を用いる場合は目視等級甲種2級以上の品質確認が必要であること、集成材はスギE65、カラマツ・ヒノキE95・E105、ベイマツE120など樹種ごとに製造しやすい等級があり、幅120mm以内が一般流通材であることが示されました。LVLは軸材用のA種と、直交単板を全体の3割まで入れられる面材用のB種を用途で使い分けます。CLTは基準強度が式で与えられる唯一の木質材料であり、製造工場が限られるため、輸送・搬入路・敷地条件まで含めた検討が必要だと語られました。
最後に青木氏は、乾燥後に小さな要素を再構成する木質材料は、大断面を得るだけでなく後の狂いを抑える利点を持つとしたうえで、中大規模木造の正しい設計・施工には材料の基本的な性質と特徴の理解が不可欠であると締めくくりました。


青木氏講演のようす
【青木謙治氏プロフィール】
1972年生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科生物材料科学専攻修士課程修了。博士(農学)。東京大学助手、(独)森林総合研究所研究員、東京大学講師、同准教授を経て、2024年より現職。専門は木質材料学、木質構造学。木材側の視点に立って、より良い木質構造の実現を目指した研究・開発を実施。大越氏講演のようす
第二講演:「中大規模木造建物の施工管理の勘所について―建方から本締めまで―現場で外さない勘所」井塚茂氏

第二講演では、計画・基礎・受入れ・建方・接合の5つの局面をつなぎ、精度を前工程からつくり込む施工管理の勘所が明かされました。
井塚氏は、日本集成材工業協同組合の『中大規模木造建築の担い手講習テキスト』と月刊『建築技術』9月号をもとに、特定の工法に偏らない施工管理の要点を解説しました。木造は接合部の加工精度が高い反面、現場での小さなズレを吸収しにくい構造です。そのため、「建方前に決め切る項目を言語化する」「基礎・部材・精度を一つの管理線でつなぐ」「見えなくなる接合部を記録する」の3点を軸に、計画段階から品質を管理する必要性が語られました。
計画段階では、施工体制・材料・揚重・地組・建方順序・検査・養生を一体で組み立てた施工計画書を、関係者全員の共通資料として更新し続けることが求められます。CLT物件の例では、ラミナ手配から建方まで約3カ月、樹種指定などの条件次第では4~5カ月を要するため、現場の仮囲い設置と同時期に材料製造を始める必要があると明かされました。輸送日数もドライバー不足により従来の1日から約2日に延びています。揚重計画では最も重い部材と最も遠い部材の両方で性能表を確認し、フック重量を吊り荷重量に加えることが示されました。
基礎段階では、アンカー精度が建方精度を決めると語られました。アンカーセットの許容差は管理許容差3mm、限界許容差5mmが一般的です。ベースプレートの孔径はボルト径+5mmが基準のため、アンカーが5mmずれるとベース金物は2.5mmずれ、階高3mの柱では建入れ許容差の限界に達します。受入れ検査では部材番号・樹種・強度等級・寸法・含水率・搬送傷などを確認し、許容差の採用基準と判断者を事前に定めておくよう提言されました。
建方では「地組→1工区→2工区→3工区」のように建方計画と一体で順序を組み、工区分割を「場所×順序×能力」で決めます。建入れ精度は本締め前に整え、柱単体ではなく通り芯や梁レベルを含めた建物全体で確認すること、是正は承認された方法で行い無断の孔拡大や金物加工を禁止することが示されました。
接合部は「見えなくなる順」に管理します。GIR接合では注入前を最後の「見える検査」としてロッドの固定状態を写真に残し、充填状況をカ所ごとに記録します。LSB(ラグスクリューボルト)接合では工場のねじ込み記録と現場の締結記録をつなぎ、写真は「全景→位置→近景」の3段階で残すことが推奨されました。
最後に井塚氏は、「先に決める」「見えるうちに確認」「記録でつなぐ」の3原則を示し、精度は“建方で合わせる”のではなく、前工程からつくり込むとして、締めくくりました。


井塚氏講演のようす
【井塚茂氏プロフィール】
1997年、広島工業大学卒業後、ゼネコンに入社し約10年間、建築施工管理に従事。2006年、三井住商建材株式会社(現・SMB建材株式会社)入社。以来、中大規模木造建築の現場管理に携わる。日本集成材工業協同組合の委員を務め、中大規模木造建築物の担い手講習では講師も担当。

登壇者集合写真
「KENGIセミナー」は今後も全国各地で開催を予定しております。
今回の講演内容、および今後のデジタルプラットフォームの展開にご期待を寄せる皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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