Archi Future 2026「デジタルの臨界点 ―揺らぐ世界で、建築と人間を問い直す―」をテーマに開催

Archi Future 2026「デジタルの臨界点 ―揺らぐ世界で、建築と人間を問い直す―」をテーマに開催

#イベントレポート

最終更新日:2026/11/04

KENGI 編集部

株式会社建築技術

KENGI 編集部

建築分野におけるコンピュテーションの活用を軸に、最新の技術動向やソリューションが集結する「Archi Future 2026」が、2026年10月23日、東京・有明のTFTホールで開催され、7,085人が来場しました。

19回目を迎える今回は、「デジタルの臨界点 ―揺らぐ世界で、建築と人間を問い直す―」をテーマに、講演会会場で行われる「基調講演」「特別対談」「パネルディスカッション」をはじめ、セミナー会場での「セミナー」、展示会会場および東館での「テクニカルフォーラム」、展示会会場での「展示会」という6つのプログラムで構成されました。

展示会には過去最多となる49社が出展し、BIMやAIをはじめ、建築の設計・施工を支える最新のデジタル技術が紹介されました。

「Archi Future 2026」会場入り口のようす

 展示会場の各企業のブースでは、設計・施工の効率化や建築の性能向上、環境設計などに関する技術やサービスが紹介され、来場者は担当者の説明に熱心に耳を傾けていました。また、具体的な活用方法や導入効果について質問する姿も見られ、出展者と来場者の間で活発な意見交換が行われました。

展示会場のようす

【講演会会場】建築・建設の未来を問い直す―基調講演・パネルディスカッション

講演会場では、基調講演「残すに値する未来をつくる―『風の谷』から建築・建設を考える」、特別対談「環境建築を問い直す-ホールライフカーボンとデジタルから見える未来-」「環境がつくる建築/建築がつくる環境」、パネルディスカッション「中堅世代のモヤモヤはデジタル技術ですっきりするのか?」が行われました。

環境建築や脱炭素、デジタル技術の活用、建設業のDXなどを切り口に、これからの建築・建設のあり方について多角的な議論が展開されました。

パネルディスカッション「中堅世代のモヤモヤはデジタル技術ですっきりするのか?-ゼネコン・40代が語る、建設業DX、AIの期待と違和感-」

パネルディスカッション「中堅世代のモヤモヤはデジタル技術ですっきりするのか?-ゼネコン・40代が語る、建設業DX、AIの期待と違和感-」では、パネリストに平井智也氏(大林組 建築本部 本部長室 デジタル・テクノ企画部 次世代技術推進課 課長)、萩原佳祐氏(鹿島建設 イノベーション推進室 技術開発・展開グループ 課長)、太田望氏(清水建設 建築総本部 設計本部 プロポーザル・ソリューション推進室 環境ソリューション部 GXグループ グループ長)、池上晃司氏(大成建設 建築総本部 DX統括推進部 デジタルコンダクト室 DX・BIM・デジタルツイン推進担当デジタルマネージャー)、平将次郎氏(竹中工務店 大阪本店技術部 シニアチーフエンジニア)が登壇し、コーディネーターは山崎裕昭氏(竹中工務店 生産本部アドバンストコンストラクショングループ グループ長)が務めました。

パネルディスカッションのようす。左から山崎裕昭氏、平井智也氏、萩原佳祐氏、太田望氏、池上晃司氏、平将次郎氏

はじめに各氏が語ったのは、これまでの経歴や現在の業務、趣味や家族との生活など、それぞれのバックグラウンドです。ベテラン世代とデジタル技術に慣れ親しんだ若手世代の間に位置し、仕事では組織の中核を担いながら、家庭でもさまざまな役割を持つ40代。働き方や価値観が変化するなか、中堅世代の置かれた状況を共有しました。山崎氏は、「モヤモヤ」を単なる不満や愚痴ではなく、これから何をどのように変えていくかという未来に向けた問いと位置づけ、デジタル技術への期待と課題をめぐる議論へと進みました。

続いて、各氏は事前にレゴブロックで制作した作品の写真を示しながら、実現したい未来の姿と、現状に感じている「モヤモヤ」について説明しました。平井氏が「実現したいこと」に挙げたのは、現場監督が現地での確認に追われるだけでなく、事務所で施工計画や判断に時間を使える環境です。その一方で、新技術を導入しても現場で十分に活用されない現状に問題意識を示しました。太田氏は、環境シミュレーションなどのデジタル技術を顧客への価値提供につなげたいとしながらも、AIの導入自体が目的化し、従来の技術でも対応できる問題にAIを使おうとすることへの違和感を示しました。池上氏は、建築と土木の分野間や部署間にある壁が、建設データの活用や情報連携を進めるうえでの課題になっていると述べました。平氏は、データやツールが整備されても、それだけでは関係者の協働は生まれないと指摘。発注者や設計者、施工者、専門工事会社が共通の目的に向かって取り組むためには、技術の導入と併せてチームづくりを進める必要があると述べました。一方で、こうした活動は工期短縮や利益といった成果にすぐには結び付かず、その重要性が認識されにくいことも課題に挙げました。

「実現したい」未来の姿と、現状に感じている「モヤモヤ」

働き方の変化も議論のテーマとなりました。労働時間の短縮や育児との両立などによって、かつてのように長時間の勤務や業務時間外の交流を通じて関係性を築くことが難しくなっています。自身も家庭での役割を担う中堅世代として、従来の働き方を前提とせず、限られた時間のなかで関係者の意思疎通を図り、協働を進めるための環境づくりについて意見が交わされました。

さらに、議論はAIによる業務の自動化と若手技術者の育成にも及びました。設計や計算の自動化が進む一方で、業務の原理や判断の根拠を十分に理解しないままツールを利用することへの懸念もあります。太田氏は、空調設計における熱負荷計算の自動化を例に、若手が計算の過程で条件や数値の意味を考える機会が減っていることを指摘しました。若手が試行錯誤しながら技術を身に付ける時間が限られるなか、デジタル技術による効率化を進めつつ、技術者自身が考え、判断する力をどのように育てていくか。また、デジタル技術を推進する管理職についても、プログラミングなどの専門技術を習得する必要はないものの、BIMなどを実際に操作し、技術の可能性や難しさを理解したうえで判断することの重要性が語られました。さらに、従来の職種や専門分野の境界が変化するなか、既存のキャリアにとらわれず、幅広い知識や経験を身に付ける必要性にも議論が及びました。

最後のテーマは、現在の若手技術者が10年後に中堅世代となったとき、どのような建設業であってほしいかという問いです。登壇者からは、変化に柔軟に対応し、自ら学び続ける姿勢や、AIが導き出した結果を理解し、説明できる専門性の重要性が語られました。また、多様な働き方を受け入れ、建設業を次の世代にも選ばれる産業にする必要性も指摘されました。太田氏は、設計業務の自動化が進むからこそ、設計者自身がその建築によってどのような社会課題を解決し、どのようなまちづくりを実現したいのかという目的意識を持つことが大切だと述べました。山崎氏は、今回の議論で「モヤモヤ」が解消されるわけではないとし、聴講者にもそれぞれが抱える疑問や思いを言葉にして発信するよう呼びかけ、議論を締めくくりました。

会場のようす

基調講演「残すに値する未来をつくる――『風の谷』から建築・建設を考える」

基調講演「残すに値する未来をつくる――『風の谷』から建築・建設を考える」では、安宅和人氏(慶應義塾大学 環境情報学部 教授/残すに値する未来 代表理事)が登壇し、池田靖史氏(建築家/東京大学 大学院工学系研究科建築学専攻 特任教授/建築情報学会 会長)が聞き手を務めました。

安宅氏が提唱する「風の谷」は、自然豊かで人口密度の低い「疎空間」を、その特性を生かしながら、存続可能かつ持続可能な場所にしていく構想です。人口密度の高い都市的な空間だけでなく、歴史や文化、豊かな自然が残る人口密度の低い地域でも、人々が暮らし続けられる未来をつくることを目指しています。安宅氏は著書「『風の谷』という希望――残すに値する未来をつくる」で、その実現に向けた課題と方向性を示しています。

基調講演「残すに値する未来をつくる――『風の谷』から建築・建設を考える」。左から池田靖史氏、安宅和人氏

講演では、AIやデータサイエンスを通じて社会の変革に取り組んできた経験を振り返りながら、構想の出発点について説明しました。安宅氏は、技術が飛躍的に進歩する一方で、自然豊かで歴史ある空間が失われ、都市にしか住めなくなる未来への危機感があったと述べました。また、人口減少と地球環境との共存を人類が直面する大きな課題として捉え、人口密度の低い地域でも持続的に暮らせる仕組みをつくる必要性を訴えました。

その実現に向けた課題の一つが、地域の経済的な持続可能性の確保です。人口密度の低い地域では、インフラの維持管理にかかる費用に対して、地域が生み出す経済的な価値が十分でないという構造的な問題があります。現在は都市部からの財政的な支援などで補っているものの、人口減少が進めば、その仕組みを維持することも難しくなります。安宅氏は、一人当たりのインフラ維持コストを根本的に引き下げると同時に、新たな価値や創造的な活動が生まれる環境を整えることが重要だと説明しました。

もう一つの課題として挙げたのが、災害に対するレジリエンスの確保です。気候変動によって災害が激甚化する一方、人口減少によって被災後の復旧を担う人手も不足していきます。このような状況では、災害による被害をできるだけ抑えるとともに、被災後にも地域の力で回復できる仕組みが不可欠です。安宅氏は、建築やインフラを壊れないようにつくるという従来の発想だけでなく、損傷した場合にも修復しやすい空間や社会のあり方を考える必要性を示しました。

建築・建設分野との関わりでは、都市部で発達したインフラの仕様を、そのまま人口密度の低い地域に適用することへの疑問を示しました。例えば、大型車両の通行が少ない地域の道路に、都市部と同じ仕様を採用する必要があるのか。水道についても、富山県の15軒の集落で、管路の更新に2億数千万円の費用が見込まれる事例を紹介しました。地域に豊富な水資源があることを踏まえ、従来の水道システムとは異なる方法を検討するなど、生活の質を維持しながらコストを抑える仕組みが必要だという考えです。また、古い建物には土地の歴史や文化が蓄積されているとして、安易に取り壊して建て替えるのではなく、既存建築物を活用しながら残していく意義にも言及しました。

一方、すべての機能を地域内で完結させることは現実的ではありません。医療や教育など、一定の人口規模や専門性が必要な分野では、都市部との連携が欠かせないと指摘しました。そのうえで、地域に人々を引き付ける「求心力」を生み出すには、生活に必要な機能を整えるだけでなく、異なる背景を持つ人々が出会い、新たな発想や活動が生まれる環境が重要だと説明。多様な生物が共存するサンゴ礁を例に、さまざまな人々がそれぞれの個性を保ちながら交流し、創造的な活動を生み出す空間のあり方を示しました。

会場のようす

【セミナー会場】デジタル技術で探る建築の新たな可能性

セミナー会場では、「Information × Intelligence-蓄積された情報を、デザインの知へ」「情報技術を活用した循環型木造建築」「地域の固有性をひらくデジタル」「電気設備BIMと点群データの活用で進化する建物改修工事」「建築確認申請図面の法規チェックを自動化するAIエージェント」「ヒューマノイドロボットは自動化建設の夢を見るか」の全6講演が行われました。

AIやBIMを活用した設計・施工の高度化から、地域資源の循環、建物の維持管理、建設の自動化まで、多様なテーマを通じて建築分野におけるデジタル技術の可能性が紹介されました。

S-1「Information × Intelligence-蓄積された情報を、デザインの知へ」

「Information × Intelligence-蓄積された情報を、デザインの知へ」では、角田大輔氏(日建設計 執行役員 テックデザイングループ代表)が、同社のDDL(Digital Design Lab)の活動を中心に、デジタル技術やAIを活用した設計支援の取り組みを紹介しました。

DDLはこれまでに450件を超えるプロジェクトに携わり、設計上の知見を蓄積してきました。こうした知見を生かし、設計事例の共通点や相違点を分析して、設計案の比較・評価に活用する手法を検討しています。また、設計条件に基づく設計案の作成や、面積・動線などの成立性の確認、過去のデザインレビューの記録を参照した検証・改善などにも取り組んでいます。さらに、これまで個別に行っていた検討をつなぎ、必要に応じて前の段階に戻りながら設計案を改善できるツールの開発も進めていると説明しました。

一方、角田氏は、こうした技術が設計者に取って代わるものではないと強調。過去の知見を活用した情報整理や検討をAIなどで支援しつつ、実際の空間体験やデザインの質については、設計者自身が判断する必要があると指摘しました。技術による支援と人間の創造性を組み合わせ、よりよい空間づくりにつなげていく考えを示しました。

講演する角田大輔氏

S-2「情報技術を活用した循環型木造建築」

「情報技術を活用した循環型木造建築」では、腰原幹雄氏(東京大学 生産技術研究所 教授)が、木造建築の変遷や部材の再利用に向けた取り組みを紹介しながら、木材の循環利用を実現するための課題と情報技術の役割について講演しました。

腰原氏は、地球環境問題への対応として木材利用が進む一方、木を伐採して建物をつくり、解体後にその木材を廃棄して新たな木を使うだけでは、建築の側で資源が循環しているとはいえないと指摘しました。森林の成長と建築物の寿命を考えれば、一つの建物を長く使うことに加え、解体後の部材を別の建築物に再利用し、木材の利用期間を延ばすことが重要になります。そのためには、木材の状態や使用履歴を把握し、再利用に必要な情報を次の利用者へ引き継ぐ仕組みが欠かせません。

木造建築の生産システムについては、伝統木造から住宅用流通製材を用いた現代の木造建築までの変遷を紹介。木材の寸法や構法が規格化されたことで、生産性や汎用性が高まり、住宅用の流通製材を用いた中大規模建築も可能になっています。その例が大阪・関西万博の大屋根リングです。柱や梁には住宅用製材の105mmを基本とした寸法体系が応用されており、こうした規格化によって部材の汎用性が高まり、再利用の可能性も広がると説明しました。

一方、実際の再利用には多くの課題があります。大屋根リングの解体では、部材の損傷を抑えるために接合部を慎重に取り外す必要があり、通常の解体よりも手間や費用がかかります。また、一度建築物に使用した集成材などを別の建築物に利用するには、使用中の環境や受けた外力、材料性能の変化を確認しなければなりません。使用済みのJAS構造用集成材を再び構造材として利用する際の制度上の扱いも課題となります。講演では、大屋根リングにおける温湿度や外力の計測、振動測定による建物の状態把握、解体後の部材調査など、再利用に向けた検証の取り組みが紹介されました。

こうした計測データや使用履歴は、元の建築に関わっていない設計者や施工者が部材を再利用する際にも重要な判断材料となります。腰原氏は、部材の性能を確認するだけでなく、その情報を次の利用者が活用できる形で蓄積・共有する必要性を指摘しました。

さらに、木材の循環利用を個々の建築物にとどめず、森林から製材、流通、建築、解体までを含む仕組みとして捉える考え方も提示しました。森林にある木の形状や性能、木材市場の在庫、製材工場の生産能力、今後の建築需要などをデータとして把握・共有することで、木材の供給と建築側の需要を結び付けようというものです。例えば、文化財の修理で特定の形状の曲がった梁が必要になった際、森林にある木の情報から適した材料を探し出すことも考えられます。また、3Dスキャンやデジタル加工技術を活用すれば、曲がりや寸法のばらつきがある木材、解体時に生じた短い部材などを、それぞれの形状や特性に応じて組み合わせ、新たな建築に活用する可能性も広がります。

ただし、こうした仕組みを実現するには、林業や製材、設計、施工、解体など、多くの関係者が持つ情報を整理し、共有する必要があります。腰原氏は、個々の事業者が独自のデータベースを構築するだけでなく、分野を越えて最低限の情報を共有し、誰もが利用できる基盤を整えることが重要だと指摘しました。また、森林にある木材の形状を調べたり、解体現場で部材の状態を確認したりするなど、データの収集そのものにも人手と労力が必要です。情報技術による仕組みづくりとともに、実際に木材と向き合い、情報を収集・蓄積する現場の取り組みが欠かせないと強調しました。

講演する腰原幹雄氏

S-3「地域の固有性をひらくデジタル-森・データ・人から考えるリジェネラティブデザイン-」

「地域の固有性をひらくデジタル-森・データ・人から考えるリジェネラティブデザイン-」には、川島範久氏(明治大学 理工学部建築学科 准教授)、秋山淳氏(西粟倉むらまるごと研究所 理事)、松本剛氏(飛騨の森でクマは踊る 代表取締役COO)が登壇しました。岡山県西粟倉村と岐阜県飛騨地域での実践をもとに、地域固有の自然資源や技術を生かしたものづくり、デジタル技術の役割、地域と都市の関係などについて議論しました。

西粟倉村では、秋山氏らが地域内の水路や自然環境に関する情報を可視化し、農地の管理や災害への対応、生態系の保全に役立てる取り組みを進めています。また、地域にある木材や空き家に残された建築材料を調査・マッピングし、再利用につなげる仕組みづくりにも着手。一方、飛騨地域では、松本氏らが、従来はチップ用材として低価格で出荷されていた広葉樹に着目し、地域の製材・加工技術と建築家の発想を組み合わせて、家具や建築に活用する取り組みを進めています。3Dスキャンなどのデジタル技術も、不ぞろいな木材の形状を生かした設計・加工に役立てられています。

こうした取り組みを受け、川島氏は、デジタル技術や情報の活用というと課題解決の手段として捉えがちだが、両氏の活動には「楽しい」という共通点があると指摘しました。専門家だけが主導するのではなく、地域で暮らす人々が参加し、身近なことから少しずつ実践を積み重ねている点に着目。さらに、活動を進めるうえで現在最も困っていることを両氏に問いかけました。

これに対し、松本氏は「やりたいことが多くて困っている」と回答。広葉樹は乾燥すると割れが生じるなど扱いにくい面があるものの、その解決方法を考える過程で新たな技術やものづくりの発想が生まれると説明しました。一方、秋山氏は、地域の現実として資金や専門人材の不足を挙げました。住民主体で活動を進めながらも、地域だけですべてを解決するのは難しく、都市部の企業や専門家が持つ技術や知見を、環境保全や地域の持続可能性という観点から活用していく必要性を述べました。

続いて川島氏は、地域で生まれた取り組みをどのように外部へ広げ、異なる地域の活動と結び付けていくのかという問いを投げかけました。秋山氏は、西粟倉村と飛騨のように異なる地域で実践する人々が、互いの経験や知見を共有し、ともに活動することの可能性に言及。そのためには、一度限りの交流に終わらず、継続的につながるためのプラットフォームが必要だと指摘しました。単に会議やイベントを開催するのではなく、実際の活動を通じて関係を築いていくことが重要だといいます。

松本氏は、飛騨での取り組みの多くが、都市部の建築家や企業関係者が現地を訪れ、素材と出会うことから生まれてきたと紹介しました。例えば、建築家が森に入り、そこにある木材の特徴を知ったうえで設計に取り入れるなど、地域の素材と外部の専門家が持つ技術や発想が結び付くことで、新たなものづくりにつながっています。松本氏は、建築関係者にも実際に飛騨を訪れ、素材に触れてほしいと呼びかけました。

川島氏は、地域にはそこに暮らす人々が育んできた独自の文化や暮らしがあると指摘。都市部の人々が地域を訪れ、自然や素材、ものづくりに触れることで新たな発想を得て、それを都市での活動にも生かしていくという、地域と都市の双方向の関係について語り、議論を締めくくりました。

「地域の固有性をひらくデジタル-森・データ・人から考えるリジェネラティブデザイン-」。左から川島範久氏、秋山淳氏、松本剛氏

【展示会会場+東館】建築実務を支える最新技術――テクニカルフォーラム

実務者の業務効率化や新たな価値創造を支援し、最新ソリューションの特性や活用事例を解説する「テクニカルフォーラム」では、A~E会場で全35講座が実施されました。

D-3 ダイテック「CADWe'llシリーズ製品で実現する施工DX―Tfas進化形「Linx V7」新機能紹介、新製品「Altemo」によるタブレットビューイング―」

ダイテック「CADWe'llシリーズ製品で実現する施工DX」では、藤平徹氏(ダイテックCAD営業部 東京事業所 営業推進課 課長)が、建築設備専用3次元CAD「CADWe'll Linx V7」の新機能と、開発中の新製品「CADWe'll Altemo」について紹介しました。

「CADWe'll Linx」は、電気・空調・衛生設備の設計・施工に広く利用されている建築設備専用CAD「CADWe'll Tfas」の後継ソフトとして開発されたBIM対応の3次元CADです。2026年10月19日にリリースされた最新版「Linx V7」では、Tfasとの互換性を高めるとともに、設備設計・施工の作業効率を高める機能を強化しています。Tfasのシート異縮尺機能への対応や、作図環境・ユーザー部品の引き継ぎに加え、空調衛生設備では、配管ルーティング時のハウジング形管継手の自動挿入、複雑な配管経路を修正する「つなぎ直し」、フロアをまたぐ冷媒管の自動作図などが紹介されました。配管経路の変更時には接続を維持したままルートを移動できるほか、継手の数量情報を拾い出しに反映することも可能です。また、「つなぎ直し」では、配管をいったん切断して作図し直すことなく経路を修正でき、継手の数を減らすことにもつながります。さらに、配管サイズの変更に伴う部材の自動更新や、勾配のある排水管への塩ビマスの挿入、旭有機材製の樹脂製バルブへの対応など、配管作図を効率化する機能も拡充しています。

電気設備では、配線注記表の情報を図面内の配線に一括反映する機能や、共同カイテック製バスダクトの耐火仕様への変更、電気設備シンボルの拡充などについて説明しました。配線注記表を用いることで、設計変更などに伴う配線情報を一括修正でき、3次元モデル上の配線の太さにも変更内容が反映されます。また、河村電器産業の電気設備設計支援サービス「Qrespo」との連携強化にも言及。現在は、Qrespoで自動設計したキュービクルの3次元モデルや設計図などをLinxに取り込むことができます。新たに開発中の機能では、Linxで設定した回路情報や負荷容量、電源種別などをQrespoに受け渡し、キュービクルに加えて分電盤や動力盤も自動設計。その結果をLinxに取り込み、仮配置した機器を正確な寸法・仕様を持つ3次元モデルに置き換える仕組みを目指しています。講演では、開発中の画面を用いて、この一連の操作が紹介されました。2027年2月ごろに予定する「Linx V7強化版」への実装を目指しており、将来的には幹線の電圧降下計算やサイズ選定への対応も計画しています。

データ連携機能については、Autodeskのクラウドサービス「Autodesk Forma」との連携が紹介されました。クラウド上の図面の読み込み・保存に加え、ファイルのロック状態や更新者の確認、外部参照リンクの管理などに対応します。図面を開く際にファイルを自動でロックし、ほかの利用者による編集を制限することもでき、複数の関係者による図面管理を支援します。また、IFCと2次元DWG図面の同時入出力にも対応し、異なるソフトウェア間でのデータ活用を支援します。

続いて、2027年春ごろのリリースを予定する「CADWe'll Altemo」について説明しました。Altemoは、Linxと連携し、Webブラウザやタブレット、スマートフォンから2次元・3次元図面や設備モデルを閲覧できるWebビューイングサービスです。IFCやPDFデータの閲覧にも対応する計画で、施工現場などCADソフトを使用しない環境でも設計情報を確認できる仕組みを目指しています。物件やチームの管理、複数人でのファイル共有など、組織での利用を想定した機能も備える計画です。

開発中の画面を用いたデモンストレーションでは、図面や3次元モデルの表示切り替え、属性情報の確認、設備部材の検索、ビューポイントの保存などの機能が紹介されました。Linxで設定したシートやレイヤの表示状態をWeb上でも再現でき、2次元図面と3次元モデルを連動させながら確認することも可能です。また、Linx側で干渉箇所をビューポイントとして登録し、現場ではタブレットなどから該当箇所を確認する利用方法も示されました。Altemo上で新たにビューポイントを登録し、マークアップやコメントを付けて現場関係者と共有することで、施工時の確認や修正指示への活用が想定されています。

Altemoは段階的な機能拡充を予定しており、第1弾ではWebビューイング機能を提供し、第2弾では検索・計測機能の充実や、写真黒板などの施工管理機能の拡充を計画しています。さらに、第3弾ではAIによる自然言語での操作や書類の自動生成、外部システムとの高度な連携なども視野に入れています。藤平氏は、設計段階で作成したCADデータを施工現場での確認や検査・計測にも活用し、現場で得られた情報をモデルに反映することで、建築設備分野におけるデジタルツインの実現を目指す考えを示しました。

「CADWe'llシリーズ製品で実現する施工DX」のテクニカルフォーラムのようす

A-4 フォトラクション「AI-BIMを活用した施工図作成「施工BIMビルダー(β版)」の紹介」

フォトラクション「AI-BIMを活用した施工図作成『施工BIMビルダー(β版)』の紹介」では、中島貴春氏(フォトラクション 代表取締役CEO)が、AIとBIM、専門人材を組み合わせた施工図作成支援サービス「施工BIMビルダー(β版)」の特徴や、AIによる施工図作成の自動化に向けた取り組みについて説明しました。

施工図は、建物の用途や構造、工事の進め方によって必要な情報や表現が異なり、建設会社ごとにも作図ルールや品質基準が設けられています。AIを活用したBIMモデル作成の効率化や図面チェックの自動化に向けた技術開発が進んでいます。しかし、実務で使用できる施工図を完成させるには、現場ごとの条件や各社の作図ルールに対応し、何を正解とするかを判断する必要があり、汎用ツールだけでは対応しきれません。

こうした課題に対し、フォトラクションが提案するのが、AIとBIM、専門人材を組み合わせた「施工BIMビルダー(β版)」です。BIMモデルの作成から施工図の作成・修正、工事の進捗に応じたモデルの更新、現場との調整まで、施工図作成業務を一括して支援するサービスで、数量算出表や検査帳票などのデータ提供にも対応します。

その中核となるのが、各社の作図ルールや品質基準を体系化した「ビルディングシステム」です。BIMモデルの作成では、使用するソフトウェアやIFC連携、部材の命名規則、LOD(詳細度)、属性情報などを定義します。施工図についても、部材の符号や線種・線幅、寸法、注記などの作図ルールを整理し、各社の仕様に応じてカスタマイズします。実際の作図業務を通じてルールを更新し、現場ごとに異なりがちな作図基準の共有・標準化につなげる考えです。

AIによる図面チェックでは、このビルディングシステムを判断基準として、施工図とBIMモデルの情報を照合します。図面上の値とモデルの値を比較し、不整合が疑われる箇所を示すとともに、どのルールに基づく指摘なのかを明示します。最終的には施工図を理解した専門人材が指摘内容の妥当性を確認します。さらに、AIがBIMソフトを直接操作してモデルや施工図を作成する技術についても開発を進めており、作図を行うAIとチェックするAIが、作図、確認、修正を繰り返すことで、各社のルールに沿った施工図の作成精度を高める構想が紹介されました。

図面やBIMデータの共有基盤についても説明しました。2026年度内のリリースを予定する「Photoruction Bim」は、図面・BIMの確認、作業依頼、申請・承認、変更履歴などを一元管理するクラウドサービスです。個人用と共有用の作業領域を分け、図面の更新履歴や版の関係を可視化することで、関係者間の情報共有を支援します。また、開発中のクラウドBIM基盤「Plantier(プランティア)」では、必要な範囲だけを読み込む処理などにより、1GBを超える大規模なBIMモデルにも対応する技術が示されました。

導入事例では、河本工業において、先行してBIMモデルを作成し、施工上の課題を事前に抽出することで、質疑(RFI)の件数を従来の半分以下に削減した成果が紹介されました。また、建築面積約4,000㎡、RC造4階建ての案件では、施工図作成までを含め、4~5週間分の工数を削減したと説明しました。

今後は、パーソルグループとの連携によるBIMオペレーターの確保に加え、建築技術の専門家が持つ知見をビルディングシステムやAIの判断に活用する構想を示しました。さらに、建設データを外部のAIやシステムから利用できる「Photoruction Platform」の開発も進めています。人材が不足する企業には作図の担い手を含めて提供し、自社で人材を確保できる企業にはAIや作図ルールなどの仕組みを提供するなど、各社の課題や業務体制に応じた施工BIMの運用を支援していく方針です。

「AI-BIMを活用した施工図作成『施工BIMビルダー(β版)』の紹介」のテクニカルフォーラムのようす

おわりに

AIやBIMをはじめとするデジタル技術の進展を背景に、Archi Future 2026では、設計・施工の効率化や技術者の育成、建築資源の循環利用、地域の持続可能性など、多岐にわたるテーマが取り上げられました。講演では、デジタル技術がもたらす可能性とともに、その成果を生かすための人間の判断や、分野を越えた連携の重要性が示されました。また、展示会やテクニカルフォーラムでは、設計・施工の効率化や業務の自動化、情報共有の高度化など、建築実務のさまざまな課題に対応する最新技術や、その活用事例が紹介されました。

デジタル技術をいかに活用し、どのような建築や社会の実現につなげていくのか。「デジタルの臨界点」をテーマに掲げた今回の催しは、技術の進歩だけでなく、建築に携わる人間の役割や判断のあり方を改めて問い直す機会となりました。

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