BIM-PLUS.1 Summit 2026

BIM-PLUS.1 Summit 2026

#イベントレポート

最終更新日:2026/09/08

KENGI 編集部

株式会社建築技術

KENGI 編集部

6月23日、戸田ビルディングで建設業界におけるBIM活用のさらなる発展と標準化をテーマとした「BIM-PLUS.1 Summit 2026」が開催され、ゼネコンや設計事務所、ソフトウェアベンダーなど多くの関係者が参加しました。本イベントは、BIMの導入や活用を検討している方々を対象としたもので、会場から配信された3つのライブセッションに加え、設計事務所やゼネコン、メーカーによる最新のBIM活用事例を紹介する「BIM Case Study」12セッション、最新のソリューションやBIM運用に役立つ技術を紹介する「BIM Tech & Solution」10セッションの計22のオンデマンドプログラムが公開されました。

冒頭では、PLUS.1代表取締役社長の髙木英一氏が登壇し、創業から2年間の歩みやBIMコンサルティングメニューの拡充、人材育成、プラットフォームサービスの開発など同社の取り組みを紹介するとともに、本イベントのテーマである「標準化」に対する考え方を示しました。髙木氏は、BIMによる業務改革を実現するためには、プロセス・People(人材・組織)・Technology(技術)の三要素を一体で整備することが不可欠であると説明しました。さらに、標準化とは命名規則や分類コードを整備することではなく、人とAIが効率的に情報を活用できる環境を設計することであるとし、AI時代においてはBIMデータをAIがそのまま活用できる資産へと転換していくことが重要であると強調しました。また、AIが処理や分析を担い、人が判断や意思決定、責任を担う役割分担のもと、業務プロセスや組織、人材を含めた情報環境全体を設計していく必要性を訴えました。

BIM-PLUS.1 Summit 2026の会場の様子
BIM-PLUS.1 Summit 2026の会場の様子

PLUS.1代表取締役社長の髙木英一氏
PLUS.1代表取締役社長の髙木英一氏

BIM活用を成功に導く組織と意思決定

大和ハウス工業東京本社技術本部技術戦略部DX・BIM戦略室室長の宮内尊彰氏は、「建設DXとAIは我々に何を与えてくれるのか-データと知能が建設業を変える-」をテーマに講演しました。冒頭では、BIMを導入している企業は増えているものの、「BIM活用が十分に成功している」と自信を持って言える企業は多くないと問題提起しました。国土交通省の調査結果などを示しながら、導入率に比べて活用率は依然として低く、その背景には人材・スキル不足に加え、従来の業務ルールや組織文化、コストなどが障壁となっている現状を紹介しました。

宮内氏は、BIMによる価値創出には、「導入」「人材育成・習熟」「業務プロセスの変革」「価値創出」という段階を着実に進めることが重要であると説明しました。また、DXやAIについても、ツールの利用率やログイン数ではなく、意思決定の迅速化や設計・施工における手戻りの削減、生産性や品質の向上など、経営価値につながる指標で評価すべきであると述べました。さらに、DXやBIMが成果を生まない要因は技術ではなく組織や意思決定にあり、推進組織にはベンダー任せではなく、自ら要件を定義し、継続的に改善を図りながら組織を牽引する役割が求められると強調しました。

AIについては、BIMによって構造化・標準化されたデータがAI活用の基盤になると説明しました。AIは予測や分析などを得意とする一方、最終的な判断や責任は人が担うべきであり、BIM・DX・AIを一体的に活用することで意思決定の質と速度を高めることが重要であると述べました。最後に、自社のBIM活用事例やDXの取り組みを紹介し、建設業界全体でデジタル活用を価値創出へつなげていく必要性を訴えました。

BIM-PLUS.1 Summit 2026 宮内氏の講演の様子
宮内氏の講演の様子

世界のBIM標準化から考える日本の課題とあるべき姿

清水建設建築総本部生産技術本部建設DX基盤部部長の三戸景資氏は、「世界の標準化」をテーマに講演しました。自身が標準化活動に携わる契機となった、鉄骨CADや設備CADなどでデータ連携方式がメーカーごとに異なり、同じ情報でありながら個別対応が必要となる「スパゲッティ現象」を紹介し、業界全体で共通ルールを整備する必要性を訴えました。続いて、英国、米国、シンガポール、スウェーデンなど海外におけるBIM標準化の取り組みを紹介しました。英国では政府主導でBIM導入を推進し、公共調達での義務化やISO 19650を基盤とした情報マネジメント体制を整備していること、米国ではBIMForumやbuildingSMARTを中心に官民が連携し、運用・維持管理まで見据えた標準化を進めていることを説明しました。また、シンガポールでは建設業の生産性向上を目的にBIMを制度化し、確認申請や公共事業への適用を進めているほか、スウェーデンでは民間主体のBIM Allianceが約200の企業・団体を束ね、業界全体で標準化や共通ルールの整備を推進していることを紹介しました。一方、日本では建築BIM推進会議をはじめ多くの団体が標準化に取り組んでいるものの、ガイドラインや基準が分散し、海外のような統一的な推進体制には至っていないと指摘しました。その上で、標準化の目的はルールを定めることではなく、重複作業やデータ変換などの無駄をなくし、建設産業全体の生産性向上につなげることであると強調しました。さらに、人口減少が進む日本では労働生産性の向上が不可欠であり、標準化はその基盤となる重要な取り組みであるとして、官民が連携した継続的な推進の必要性を訴えました。

BIM-PLUS.1 Summit 2026 三戸氏の講演の様子
三戸氏の講演の様子

パネルディスカッション

BIM標準化を実現するために必要な取り組みとは

標準化タスクフォースの成果と今後の方向性を議論

髙木氏をモデレーターに、標準化タスクフォースのサブリーダーを務める大越潤氏(清水建設生産技術本部建設DX基盤部リエンジニアリンググループ長)、松本朋之氏(竹中工務店設計本部BIM推進グループ長)をはじめ、標準属性項目リストを担当した家原憲太郎氏(意匠)(山下設計設計本部BIM推進室副室長)、山本敦氏(構造)(東畑建築事務所構造設計室兼Dxデザイン室主管)、吉原和正氏(設備)(日本設計情報システムデザイン部副部長兼設計技術部BIM支援グループ長)、川崎貴之氏(施工)(鹿島建設株式会社建築管理本部BIMソリューション部課長)、積算ユースケースを担当した須貝成芳氏(三菱地所設計海外業務企画部 ユニットリーダー(兼務:コストコンサルティング部・DX推進部)公益社団法人日本建築積算協会 情報委員会 部会長)、外部データ連携を担当した安井謙介氏(日建設計テックデザイングループ BIMマネジメント部アソシエイト)が登壇しました。

セッションでは、令和7年度成果報告書をもとに、「標準属性項目リスト」「ユースケース検証」「外部データとの連携」の3つを柱として、建築BIM推進会議・標準化タスクフォースの取り組みを紹介するとともに、実務で標準化を進める上での課題や今後の方向性について議論しました。髙木氏は、300ページを超える成果報告書の内容を補足しながら、各担当者から取り組みの狙いや苦労、実務で活用する際のポイントを聞いていく構成で進行しました。

標準化タスクフォース設立の背景

「標準化」は業務を縛るためではなく、データをつなぐため

はじめに登壇した標準化タスクフォースの大越氏と松本氏は、タスクフォース設立の経緯と成果物について説明しました。

松本氏は、これまで建築BIM推進会議では各部会が個別に標準化を進めてきたものの、それぞれが独立して議論していたため、成果の整合や横断的な整理が課題となっていたと振り返ります。そのため、各部会の成果を横串で整理し、共通するルールや考え方を取りまとめる組織として標準化タスクフォースが設置されたと説明しました。大越氏は、標準化という言葉から「全員が同じやり方を強制される」と受け取られがちですが、目指しているのは各社の業務を統一することではないと説明しました。重要なのは、異なるシステムや組織でも情報を共通の意味で扱える環境を整備することであり、そのための共通言語として標準属性項目リストやデータ連携ルールを整備してきたと紹介しました。また、情報連携の流れを整理する「データジャーニー」の考え方も示されました。誰が、いつ、何をするために、誰へどのような情報を渡すのかを整理し、必要な情報をBIMの形状や属性、仕様書、外部データのどこから取得するのかを明確にすることで、データ連携の再現性を高めることを目指しています。

BIM-PLUS.1 Summit 2026 パネルディスカッションの様子 左から髙木氏、大越氏、松本氏
パネルディスカッションの様子 左から髙木氏、大越氏、松本氏

標準属性項目リストの改訂

意匠・構造・設備・施工の視点から標準化を検討

標準化タスクフォースの概要説明に続き、髙木氏は、標準属性項目リストの検討を担当したメンバーとして、意匠分野の家原氏、構造分野の山本氏、設備分野の吉原氏、施工・生産分野の川崎氏を紹介しました。それぞれの分野で1年間にわたり標準属性項目リストの改訂を進めてきた担当者であり、「どのような考え方で項目を整理し、何を目指してきたのか」を中心に議論を進めると説明しました。

最初に意匠分野を担当した家原氏は、「標準化」という言葉は創造性や自由度を奪うものという印象を持たれがちですが、自身はそうならないよう強く意識して検討を進めてきたと語りました。建築に携わる人は仕事そのものを楽しんでいる人が多く、標準化によって設計の面白さが失われることがあってはならないと考えたためです。そのため、各社や設計者の工夫を制約するのではなく、情報を共通の言葉で扱えるようにするための最低限のルールづくりを目指したと説明しました。

続いて構造分野の山本氏、設備分野の吉原氏、施工・生産分野の川崎氏も、それぞれの立場から検討内容を紹介しました。髙木氏は、今回の標準属性項目リストは「すべてを統一する」ことを目的としたものではなく、意匠・構造・設備・施工という異なる専門分野が共通の情報をやり取りできる基盤を整備することに意義があると説明しました。各分野で使用する用語や必要な属性情報には違いがある一方で、BIMデータを設計から施工、維持管理へと活用していくためには、最低限共有すべき情報を整理する必要があります。そのため、各分野の専門家が実務者の立場から議論を重ね、共通部分と分野固有の情報を整理しながら標準属性項目リストを改訂してきた経緯が紹介されました。

BIM-PLUS.1 Summit 2026 パネルディスカッションの様子 左から髙木氏、家原氏、山本氏、吉原氏、川崎氏
パネルディスカッションの様子 左から髙木氏、家原氏、山本氏、吉原氏、川崎氏

標準属性項目リストの実装へ

「名称」ではなく「ID」を共通化し社会実装を推進

標準属性項目リストの検討では、属性名称そのものを統一するのではなく、共通の「属性ID」を整備する考え方についても議論されました。髙木氏は、これまで業界内では複数の団体がそれぞれ属性項目やプロパティを検討してきたものの、同じ内容であっても名称や表現が異なるため、実務におけるデータ連携の妨げになっていたと説明しました。そのため標準化タスクフォースでは、各団体で検討されてきた成果を一つのテーブルに集約し、重複や不足項目を整理したうえで共通リストとして再構成したと紹介しました。また、単に属性を一覧化するだけではなく、「フィルターセット」の考え方を導入し、目的や業務に応じて必要な属性だけを抽出できる仕組みも盛り込んでいます。

構造分野の山本氏は、現在ユーザーグループでも属性項目IDを実装する取り組みを進めていると説明しました。実務では各社が長年使用してきた名称へのこだわりが強く、一つの名称へ統一することは現実的ではありません。一方で、名称が異なっていても同じ意味を持つ属性に共通IDを付与すれば、各社が従来の運用を維持したままデータ連携が可能になります。この「名称は残し、IDを共通化する」という考え方は、現場への負担を抑えながら標準化を進められる現実的な方法であり、今後は企業や業界団体、ソフトウェアベンダーにも広く活用してほしいと期待を示しました。

設備分野の吉原氏は、今回整備した標準属性項目リストについて、昨年度公開した内容との整合性を確保しながら全面的に見直し、国内の設備BIMソフトでも利用できるレベルまで実装を進めたと説明しました。また、設備分野では膨大な数のパラメーターが存在しますが、それらは単なる一覧ではなく、入力した値によって他の属性が自動的に決定される「主従関係」を持つものが多いと指摘しました。例えば、風量や水量、能力などの基本情報を入力することで、消費電力や機器仕様などがメーカー情報と連携して自動的に決定されるケースもあります。そのため、標準化では属性項目を整理するだけでなく、属性同士の関係性まで整理しておくことが重要であり、実際の設計・施工業務で利用できるデータ構造を意識して検討を進めてきたと述べました。

施工・生産分野の川崎氏は、施工段階では設計情報をそのまま施工へ引き渡すだけでは十分ではなく、施工計画や工程管理、品質管理など、施工段階で必要となる情報をどのように追加し、管理していくかが重要になると説明しました。一方、施工分野の標準属性項目リストについては、意匠・構造・設備との属性項目の整合がまだ十分に図られていないことから、現時点では「参考」として位置付けられています。また、施工分野ではユースケースによる検証も進められており、令和6年度にはアルミサッシとガラス、令和7年度には乾式間仕切り壁を対象とした検証を行ったことを紹介しました。

髙木氏は、今回整備した標準属性項目リストは完成形ではなく、社会実装を通じて継続的に改善していくことを前提としていると説明しました。実際の業務で利用される中で課題や改善点を取り込みながら内容を更新し、より実用性の高い標準へ発展させていくことが重要であり、今回の成果がBIMデータ活用の共通基盤となることに期待を示しました。

積算ユースケースから標準属性項目リストの活用を検証

積算ユースケースを担当した須貝成芳氏は、標準属性項目リストを実際の業務でどのように活用できるかを確認するために行った検証について説明しました。検証では、意匠・構造チームが実施設計段階を想定したサンプルBIMモデルを作成し、内訳明細の各項目とBIMモデルのオブジェクト情報がどのように対応するのかを確認しました。

須貝氏は、検証を通して見えてきたのは、積算に必要な情報をすべてBIMモデルに入力すればよいわけではないという点だと説明しました。従来の設計業務でも、図面だけですべての情報を伝えているわけではなく、仕様書や標準仕様書や特記仕様書など複数の情報を組み合わせて設計内容を伝えています。BIMにおいても同様に、積算に必要な情報を整理したうえで、何をBIMに持たせ、何を仕様書などほかの情報から取得するのかを考える必要があります。

また、内訳明細の各項目について、BIMオブジェクトから数量を取得できるかを検証したところ、BIMだけでは取得できない情報があることも確認されました。しかし、BIMから取得できる情報の割合が高ければよいというものではなく、すべての情報をモデルに入力するために必要な作業量と、BIMから自動的に数量を取得することで得られるメリットとのバランスが重要であるとしました。さらに、モデルを作成する人によって取得結果が異なれば、データとしての信頼性にも影響することから、誰が作成しても同じ結果を得られるよう、再現性を確保するためのルールやガイドラインを整備する必要性も指摘されました。

検証では、設計と積算で必要とする情報に違いがあることも明らかになりました。設計側ではモデル上で扱えていると考えていた情報でも、積算側から見ると数量を拾うために必要な情報が不足している場合があることも明らかになりました。これまで図面を中心とした業務では意識されにくかった情報の受け渡しを改めて整理し、設計、積算、施工など、情報をつくる側と利用する側が必要な情報について共通認識を持つことが、BIMによるデータ連携を進めるうえで重要であると説明しました。

BIM-PLUS.1 Summit 2026 パネルディスカッションの様子 パネルディスカッションの様子 左から髙木氏、家原氏、山本氏、吉原氏、須貝氏
パネルディスカッションの様子 左から髙木氏、家原氏、山本氏、吉原氏、須貝氏

「すべてをBIMに入れる」のではなく、情報の関係性を設計

外部データ連携を担当した日建設計の安井氏は、BIMにすべての情報を格納するのではなく、BIMと外部データとの関係性をどのように設計するかが重要であると説明しました。外部データ連携を考える際には、ツールやファイル形式から検討するのではなく、「外部の値がどこに存在するのか」「BIM内部に保持するのか」「いつ反映し、いつ切り離すのか」といった情報の扱い方をあらかじめ整理する必要があるとしました。

その関係性については、「参照」「随時リンク」「常時リンク」「埋め込み」の4つに整理しました。「参照」はIDやURLなどの参照情報のみをBIM側に持ち、値そのものは外部に置く方法、「随時リンク」は必要なタイミングで外部から値を取得する方法、「常時リンク」は外部データの更新を継続的に同期する方法、「埋め込み」は提出や合意記録などのために確定値としてBIM側へ固定する方法です。安井氏は、これらを使い分けることで、誰が情報の最新性を担保するのか、どの時点で情報を確定するのかといった責任分担も明確にできると説明しました。

また、外部データの代表例として仕様書を挙げ、設計図書は標準仕様書などを参照して成立している一方、その内容をすべてBIM属性として入力しているわけではないと指摘しました。今後、標準仕様書などのデジタル化が進めば、AIとの連携も含め、何を外部データとして保持し、何をBIM側に持たせるのかという整理がより重要になるとしました。

ユースケースとしてはLCA(ライフサイクルアセスメント)を取り上げました。LCAでは、BIMから得られる数量情報と、外部に存在する環境負荷原単位を組み合わせて算定するため、BIMと外部データの連携構造が明確に表れます。一方、実際の環境データはPDFなどで公開され、項目や表記、単位、範囲などが統一されていない場合も多く、「公開されていること」と「計算に組み込めること」は別問題であると指摘しました。APIの有無以前に、必要な項目や単位、適用範囲などをそろえ、機械可読性のある形に整備する必要があると説明しました。

さらに、国内の事例としてICTツールを使用した大和ハウス工業の事例を紹介し、ポイントとして「BIMだけで完結させる必要はない」と述べました。合成スラブのように複合材料で構成される部材については、BIMモデルを無理に詳細化するのではなく複合原単位を用いて補完し、ボルトや接合プレートなどBIM上で形状表現していないものについては係数や属性情報から推定するなど、モデルの情報量に応じて算定方法を使い分けることが実務的であると説明しました。

BIMのモデリング単位と外部データが管理する材料・製品単位が一致しないことが実装上の大きな課題になるとし、両者をつなぐ中間データベースを設けて粒度の違いを調整する方法が、現時点では有効ではないかとの考えを示しました。また、積算とLCAはいずれも「数量×単価」「数量×原単位」という類似した構造を持つことから、積算分野で整理してきた項目や考え方をLCAへ展開できる可能性も紹介しました。

議論の最後には、社内にある外部データであれば標準属性項目リストなどを使って比較的連携しやすい一方、企業外の団体や行政が保有するデータとの連携には、官民それぞれの役割整理が必要であるとの意見も示されました。BIMを数あるデータの一つとして捉え、すべてをBIM内部に持つのではなく、外部に存在する情報と適切につなぎながら活用することが今後の重要な課題であるとまとめました。

BIM-PLUS.1 Summit 2026 パネルディスカッションの様子 パネルディスカッションの様子 左から髙木氏、安井氏
パネルディスカッションの様子 左から髙木氏、安井氏

質疑応答

標準化は社会実装を見据えた運用と継続的な改善が重要

続いて、会場およびオンライン参加者から寄せられた質問に登壇者が回答しました。モデレーターを務めた髙木氏は、令和7年度成果報告書は300ページを超える内容であり、限られた時間ではすべてを紹介できないことから、成果報告書を補足する形で、実務で活用する際の考え方や今後の展開について議論を深めたいと説明し、各テーマについて担当者へ質問を投げ掛けながら進行しました。

最初の質問は、積算部会で検討が進められている分類体系と標準属性項目リストとの関係についてです。髙木氏は、成果報告書では積算ユースケースと標準属性項目リストの両方が整理されているものの、その関係が分かりにくいという声もあるとして、積算ユースケースを担当した須貝氏へ考え方を尋ねました。

須貝氏は、積算協会では「概算ガイドブック1」を公開しており、その中で分類体系を活用した概算積算の検討経緯を整理していると紹介しました。当初はUniclassなどの分類体系をコスト情報へ直接結び付けることも検討しましたが、実務では分類体系だけで積算情報を管理することは難しい場面も多かったといいます。そのため、分類体系を単独で活用するのではなく、標準属性項目リストやユースケースと組み合わせながら活用することが重要であり、今後も実務検証を重ねることで活用範囲を広げていきたいと説明しました。また、「概算ガイドブック1」は内容が多岐にわたるため、この秋にはWeb説明会を開催し、検討内容を詳しく紹介する予定であることも明らかにしました。

続いて髙木氏は、「属性IDを分類体系に基づく階層構造とすることはできないのか」という質問を取り上げ、大越氏へ考え方を尋ねました。大越氏は、標準化タスクフォースが整備した属性IDは分類体系とは役割が異なると説明しました。属性IDは分類体系や並び順に依存しない共通の識別子であり、あえて意味を持たせない構成としているといいます。分類方法や並び順は企業や業界団体、利用目的によって異なるため、標準側で固定してしまうと活用の自由度が失われることになります。そのため、標準属性項目リストでは共通IDのみを定義し、利用者側が必要に応じてフィルターや分類体系を自由に構成できる仕組みとしました。名称が異なっていても同じ意味を持つ属性に共通IDを付与することで、各社がこれまで使用してきた名称を変更することなくデータ連携が可能になることが、今回整備した「辞書」の大きな役割であると説明しました。

設備分野については、「設備業界ごとに標準属性を細かく定義する必要があるのか」という質問が寄せられました。これに対し吉原氏は、今回整備した標準属性項目リストでは主要な設備機器について必要な属性は概ね網羅していると説明しました。一方で、設備機器は種類が非常に多く、新製品も次々に登場するため、すべての属性を標準として定義することは現実的ではないといいます。そのため、基本となる共通属性を標準項目として整備し、それ以外の情報については追加属性として柔軟に管理できる考え方を採用しました。また、設備では風量や水圧などの基本パラメータを入力すると、消費電力や機器仕様など他の情報が自動的に決まる「主従関係」を持つ属性も多く、単純に項目を並べるだけではなく、属性同士の関係性まで整理することが標準化では重要になると説明しました。

会場からは、「労働生産性を高めるだけでは限界があるのではないか。労働そのものの価値を高めるにはどうすればよいか」という質問も寄せられました。髙木氏は、このテーマは今回のフォーラム全体にも関わる重要な論点であるとして、三戸氏へ意見を求めました。

三戸氏は、AIやDXは確かに業務効率化や生産性向上に大きく貢献するものの、それだけを目的としていては十分ではないと述べました。データが構造化され、AIを活用できる環境が整えば、これまで10人で行っていた業務を1人で処理できるようになる可能性もあります。しかし、その結果として生まれた時間をどのような価値へ結び付けるのかまで考えることが重要であると指摘しました。AIが得意とする業務はAIへ任せ、人間は判断や創造、意思決定など人にしかできない役割へ注力することで、仕事そのものの価値を高めていくことが今後ますます重要になるとの考えを示しました。

最後に髙木氏は、宮内氏へ「BIM導入に消極的だった設計者をどのように巻き込んできたのか」と質問しました。宮内氏は、最初から全社展開を目指したのではなく、小さな成功事例を積み重ね、その効果を具体的に示すことを重視してきたと振り返りました。また、教育やサポートを継続し、誰もが利用できる環境を整備したことで、当初は反対していた社員が推進役へ変わるケースも少なくなかったといいます。一人ひとりが何を重視しているのかを理解し、それぞれにとってのメリットを示し続けることが、BIMを組織へ定着させるうえで重要だったと説明しました。

質疑応答の最後に髙木氏は、今回のフォーラム全体を振り返り、「標準化」「BIM」「AI」はいずれも目的ではなく、より良い価値を生み出すための手段であると総括しました。標準を整備すること自体が目的ではなく、実際に社会実装し、現場で活用しながら継続的に改善していくことが重要であると述べ、業界全体で標準化を育てていくことへの期待を示してセッションを締めくくりました。