
構造図のつくり方|実務経験者が解説
最終更新日:2026/05/29

Fortec Architects株式会社
沖原 圭佑
大手建設会社に11年間、構造設計者として従事。工場・研究所・教育関連オフィス・ホテルなど、様々な建物種別に携わった。その後、ライティング技術を身に付けて建築ライターとして独立。建築・不動産・建設DXなど、幅広い建設・建築コンテンツの執筆を手掛けながら、ベンチャー企業の施工管理アプリ開発のアドバイザリー業務なども行っている。現在はFortec Architectsの構造エンジニア兼建築ライターとして活動中。
いくつもの困難を乗り越えながら構造設計を進めた結果、完成する成果物のひとつが構造図です。構造図は構造設計者の意図や思想を伝達する設計図書であり、その完成度が見積もり精度や施工品質に直結します。
しかし、構造図は多くの情報を内包するため、慣れないうちはどのようなステップで進めればよいか悩みがちです。そこで今回は、私が実務で学んだ構造図のつくり方についてわかりやすく解説します。より細かな意図を伝達するためのディテールについては経験を積みながら要点を掴む必要がありますが、このコラムを参考にすることで構造図の骨格までをスムーズにつくれるようになるでしょう。
構造図に必要な図面
はじめに、構造図に必要な図面を確認しましょう。必要図面は構造種別などによって異なりますが、建築基準法施行規則に記載されている一般的な図面は以下のとおりです。
図面名称 | 明示すべき事項 |
基礎伏図 | ・基礎の配置、構造方法及び寸法並びに材料の種別及び寸法 |
各階床伏図 | ・構造耐力上主要な部分である部材、間仕切壁及び手すり又は手すり壁の位置、寸法、構造方法 ・材料の種別並びに開口部の位置、形状及び寸法 |
小屋組図 | 同上 |
2面以上の軸組図 | 同上 |
構造詳細図 | ・構造耐力上主要な部分である接合部並びに継ぎ手及び仕口の構造方法 ・鉄筋の配置、径、継手及び定着の方法など |
使用構造材料一覧表 | ・構造耐力上主要な部分に用いる材料の種別など |
基礎・地盤説明書 | ・支持地盤の種別及び位置 ・基礎の種類 ・基礎の底部又は基礎ぐいの先端の位置 ・基礎の底部に作用する荷重の数値及びその算出方法 |
上記に加え、プロジェクト固有の仕様をまとめた「特記仕様書」、標準的な納まりを定めた「配筋標準図」や「鉄骨溶接基準図」、目次の役割を果たす「図面リスト」を作成することで構造図が完成します。
図面リストで全体像を掴む
まずは図面リストを作成し、構造図の全体像を掴みましょう。図面リストは、構造図の目次のようなもので、図面番号と図面名称を一覧で示したものです。これを最初に作成することで、全体ボリュームを把握することができ、スケジュールを管理しやすくなります。
建築基準法施行規則で求められている図面ではありませんが、図面リストがあると受け取る人も構造図の構成を理解しやすくなるので、できれば作成することをおすすめします。
伏図・軸組図・断面リストで骨格をつくる
次に、伏図、軸組図、断面リストを作成します。断面リストは、部材の断面寸法や使用材料の一覧表です。これらを作成することで、部材配置や主要断面の情報が盛り込まれ、構造図の骨格ができあがります。大きな建物の場合は詳細図のボリュームが多くなりますが、初心者が任されやすい小さな建物の場合は伏図・軸組図・断面リストが大きな割合を占めるので、これらが形になると終わりが見えて安心できるというメリットもあります。
この段階では、細かい位置やレベル、部材断面まで確定している必要はありません。まずは現段階の情報で図面作成を進め、6~8割程度の完成度の図面をとにかく増やしていきましょう。
詳細図で肉付けしていく
伏図、軸組図、断面リストで全体の骨格ができたら、詳細図を作成していきます。詳細図には、標準図と異なる鉄筋コンクリート部材の配筋要領や、鉄骨部材の溶接要領、外装材下地の取り合いなどを描きます。一つひとつのディテールに時間がかかるため、伏図などに比べるとなかなか進まないように感じてしまいますが、粘り強く取り組みましょう。
なかにはディテールを考えるのが難しい部位もあります。そのときは先輩の過去の図面を借り、さまざまなディテールを参考にしながら自分なりにアレンジしていきます。自分で一から考えるのは難しいですが、多くの納まりは参考になるディテールがあるものです。アレンジを繰り返して引出しを増やしていくうちに、さまざまな納まりに対応できるようになります。
構造計算書を作成しながら図面の精度を高めていく
構造設計者は、構造図と同時に構造計算書を作成する必要があります。伏図、軸組図、断面リスト、詳細図がある程度完成した段階になると、構造解析モデルも完成に近づき、構造計算書をつくり始める時期になっているでしょう。
構造計算書をつくり始めると、主要部材の位置やレベルの他、接合部や二次部材といった細かい部材も確定していきます。構造計算や建築・設備設計との最終調整によって生じる変更を図面に反映させながら、図面の完成度を9~10割まで高めていきましょう。
特記仕様書を作成する
最後に、特記仕様書を作成します。特記仕様書は、プロジェクト固有の材料、施工方法、品質、留意事項などをまとめた図面です。詳細図などで特記している部分はそちらが優先されますが、それ以外の仕様は特記仕様書に準ずることになるので、非常に重要な役割を担います。
特記仕様書は文字が多く、はじめは内容を理解できない部分もあり、とっつきにくく感じるかもしれません。しかし、会社の設計施工基準などと照らし合わせながら、一つひとつの内容を理解することが大切です。詳細図を作成するような部位はその内容を強く認識していますが、特記仕様書のような全体にかかる内容は意識しにくいものです。なんとなく文字を入力していくと、知らず知らずのうちに意図しない内容となってしまうこともありますので、それぞれの内容や該当箇所をイメージしながら作成していきましょう。
おわりに
構造図はいくつもの図面で構成されるため、流れとスケジュールをしっかり管理しないと、抜け漏れが発生してしまいます。そうすると、見積もり落ちや着工後の設計変更、ときには工事の手直しに繋がるため、抜け漏れがないように全体像を掴みながら順序よく進めることが大切です。慣れれば自分なりの進め方を見つけられますが、はじめのうちはこのコラムのような進め方を参考にしながら取り組んでみてください。



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