
優秀な設計チームの構造設計者ってどんな人?
最終更新日:2026/09/15

Fortec Architects株式会社
沖原 圭佑
大手建設会社に11年間、構造設計者として従事。工場・研究所・教育関連オフィス・ホテルなど、様々な建物種別に携わった。その後、ライティング技術を身に付けて建築ライターとして独立。建築・不動産・建設DXなど、幅広い建設・建築コンテンツの執筆を手掛けながら、ベンチャー企業の施工管理アプリ開発のアドバイザリー業務なども行っている。現在はFortec Architectsの構造エンジニア兼建築ライターとして活動中。
優秀な設計チームの構造設計者ってどんな人?
優れた建築の裏話を聞くと、必ずといってよいほど優秀な設計チームがいますよね。彼らは、それぞれが優秀な設計者というだけでなく、建築・構造・設備の垣根を越えてお互いに支え合いながらチームとして100%以上の力を発揮しています。
では、そんな設計チームを支えている構造設計者はどんな人なのでしょうか。私は、構造設計の技術はもちろんのこと、プロジェクトに取り組む姿勢や人柄が、チームの一員としての構造設計者の価値を決めると思っています。今回は、チームの力を最大限以上に引き出す構造設計者の特徴のお話です。
優秀な設計チームとは
そもそも、優秀な設計チームとはどのようなチームだと思いますか?
さまざまな考え方があると思いますが、協業が重視されるゼネコンの設計部を経験していた私が魅力を感じるのは、建築・構造・設備の設計者が、仲間の課題を解決しながら進めるチームです(図1)。

図1 お互いを支え合う設計チームのイメージ
上図の左側のように、それぞれの担当者が自分の殻に閉じこもっていると、自分だけでは解決できない課題を乗り越えるのが難しくなってしまいます。一方、右側のようにそれぞれの担当者が他分野の知識を持って干渉できれば、お互いに知恵を出し合うことでさまざまな解決策を考えられるでしょう。
円の重なりは大きければ大きいほど支え合える領域が広がり、お互いの良さを引き出しながらプロジェクトを進められます。それぞれの担当者が他の領域に関心を持ちながら積極的に協力し合えるチームが、優秀な設計チームではないでしょうか。
特徴① 一緒に考える、口を出す
そのような設計チームには、一緒に考え、積極的に口を出せる構造設計者が歓迎されます。例えば、設備設計者が配管ルートで悩んでいるとき、細かい設備計画までは理解できていないとしても、「ここの小梁の架け方を変えればこっちに配管を通せそう」といった案を積極的に出せると非常に喜ばれます。
はじめのうちは建築や設備、施工の領域を深く理解するのは難しいものです。それでも、自分なりに考えたこと、思いついたことを積極的に発言していけば、それがきっかけになって解決策が見えてくるかもしれません。慣れない分野の課題に恐れず、協力的な姿勢を大切にしていきましょう。
特徴② 手戻りを減らす、検討を加速させる
プロジェクトを進めていると、建築・構造・設備のそれぞれの担当者にしか見えない潜在的な課題がいくつも浮かび上がってきます。例えば、柱と外壁の位置関係を決めるとき、距離が近すぎると柱脚が納まらず、外壁を外にずらす、柱を内側に寄せるといった対応が求められます。いずれにしても建物計画やコストに大きな影響を与える変更になるため、避けるべき手戻りです。建築担当者は、柱のサイズを見ても柱脚の大きさをイメージできないことがあるため、建築図をみたときに構造担当者が離隔をチェックしてあげるとリスクを減らせます。
こういった項目は、制約であるとともに建物を成立させるための必要条件であり、それらを明確にすることは付随する検討を加速させるきっかけになります。そのまま進むとリスクがあると感じたら、積極的に共有するようにしてみてください。
特徴③ 先に動く、きっかけをつくる
手戻りを減らすことなどと同様に、プロジェクトをスムーズに進めるためには、構造設計者が先に動いてあげることも大切です。私がよく遭遇するのは、外装下地を計画するシチュエーションです。
複雑な外装の下地を計画する際、外装のイメージを図示してくれれば進めやすいのですが、建築設計者は鉄骨の取り合いをイメージしにくいため、外装を描くのが難しいケースが少なくありません。そういったシーンでは、構造設計者が先に手を動かして想定される外装とその下地を描いてあげると、建築設計者はそこに追記・修正を加える形で進めやすくなります。
他の課題が山積みになっていると取っ付きにくい項目は後回しにされがちなので、構造設計者が先に手を動かして考えるきっかけをつくってあげると喜ばれます。
特徴④ 話しかけやすい、思い付きのアイディアを相談しやすい
構造設計者は、建物の安全性を担保する存在であるため、基本的には意見が優先される傾向があります。ところが、安全という言葉を盾にして建築・設備設計者に寄り添う姿勢を見せないと、次第に相談しにくい存在になってしまいます。
ここまで述べてきたとおり、建築・構造・設備の設計者が垣根を越えてお互いの課題解決に協力し合えるのがよい設計チームです。無理かもしれない思い付きのアイディアでも気軽に相談できるような関係性を保つことが大切です。三人寄れば文殊の知恵ですので、普段から話しかけやすい存在でいることを心がけましょう。
おわりに
建築・構造・設備の設計者がお互いに支え合えることは、課題を解決するだけでなく、相乗効果を生んで類のない名建築を生むことにも繋がります。JSCA賞や日本建築学会作品賞を受賞した「プラダ ブティック青山店(2003年竣工)」は、複層ガラスとそれを支持する外殻構造が意匠・安全・快適性を同時に成り立たせている一例です。構造以外の分野にも踏み込める構造設計者になり、建築・構造・設備がお互いのよさを引き出す名建築を生み出してください。



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