
設備系人材の市場価値とは
最終更新日:2026/03/05
株式会社日建設計総合研究所
村井絢香
大手建設会社にて設備設計(電気・機械)に7年、設備施工管理に3年従事。大規模病院、歴史的建築物の復興、放送局、大規模再開発等のプロジェクトを担当しながらZEB設計ガイドライン・設計ツールの社内開発にも携わる。その後スタートアップ企業に転職。設備部門の立ち上げを行い、事業主として設備PMおよび設備設計に2年従事。設計・施工・事業主の3つの視点を強みに、現在は日建設計総合研究所の研究員として環境・エネルギー分野の調査研究とコンサルティングを行っている。
建築設備界隈の皆様、毎日のお仕事お疲れ様です。担当プロジェクトの状況によっては、休日や睡眠時間返上で働かれている方もいらっしゃるのではなかろうかと思います。日々仕事に邁進する中で、ある日ふと「なんでこの仕事をしているんだろう」と思ったことはありませんか?別業界の友人と話していると、なんだか自分よりも早く帰っているし給料も良さそう。そしてプライベートも充実してそう。設備業界なんて辞めて、ホワイトでキラキラした業界に転職するんだ!と衝動で動いてしまう前に、冷静に自分の置かれている状況を見つめて頂きたい。あなたは今、建築業界で最強ともいえるカードを持っているのです。
1.設備系人材は超売り手市場
設備系技術者は2026年現在、超不足状態です。最新の統計値等はお使いの検索エンジンやAIにてキャッチアップ頂ければと思いますが、背景としては①少子高齢化による労働人口の減少、これに相反する②建設需要の増加、③労働環境の相対的な魅力鈍化、④設備系人材の就職先の多様化の4点が挙げられます。
私が前職で採用に携わった肌感で言うと、実務経験を積み、自走できる働き盛りの人材(いわゆる中堅ミドル層)は非常に希少価値が高く、その中から自社とカルチャーマッチする人材を探し当て、円満転職して頂くのは奇跡に近いことでした。
2.設備系人材の真の価値
世間で言われている話は上記の通りですが、私の意見としては、設備の専門知識と経験があること以上に高いポテンシャルを秘める人の集団だと思っています。
設備系人材、特に設備設計や施工管理は、視野が広く、良い意味で客観的で、共感力が高く、かつ粘り強い人が多いように感じています(もちろん個人差や特性はそれぞれですが)。それは技術的な専門分野が広く、ステークホルダーが多く、かつプロジェクトの下流側から上流側をコントロールする力が必要な職種であることが関係しているのだと思います。
3.自分の身を置く環境の選び方
では、最強のカードと最強の特性を持つ私たちは、自分が身を置く環境をどのように選ぶのか?設備系の仕事の選択肢は人材系媒体から多数発信されているのでここでは割愛します。主観的になりますが、私が2回転職したときに大切にしたポイントを紹介します。
①心の中の「モヤモヤ」を言語化する
転職の動機はポジティブな内容とするのが基本ですが、これは表向きの話。裏には何かしらネガティブな動機があります。これをまず言語化して、単なる愚痴なのか、環境を変えて解決すべき問題なのか、むしろ今の環境で解決すべき問題なのか深堀します。
②モヤモヤを自責で深堀する
深堀する時、大切にしたいのは自責で考えることです。「上司がこれをしてくれないから」とか「一緒に働く人が良くないから」というのは他責の愚痴であり、自分が代わりに動くか、組織を教育すればよいだけです。とはいえそんな簡単な話じゃないことが多いですが、労力を惜しまずそれに取り組んでみる価値があるか、と自問自答してみることが大切です。
自責思考になることで、自分の人生に責任を取っている感覚が持てます。また、ネガティブな要素を整理していたはずなのに、いつの間にかやりたいことやキャリアプランがクリアになっていたりもします。
どう考えても環境を変えて解決すべき問題と自分のやりたいことがクリアになれば、環境を変える価値ありです。転職も一つの方法ですが、社内の部署異動は比較的低リスクな方法ですし、よりリスクを取って飛躍したいなら独立もアリです。
③リスクを正確に把握する
環境を変える、ということに何かと夢を抱きがちですが、失うものも多いです。今の組織にある膨大なナレッジ、評判、人脈、ネームバリュー。特に同居家族がいらっしゃる方は、収入や勤務形態の変化でストレスが増えるかもしれません。多少のリスクを負ってもやりたいと言えるのか。発生しうるリスクは何なのか、その場合どうやってリカバリーするのか。私は極力具体的にシミュレーションするようにしていました。
ここまで①、②と割とマイナス思考なことを書きましたが、ネガティブ要素が少ないことは総じてストレスが少ないことであり、ポジティブな活動量を増やすことにつながって幸せになれる、というのが私の持論です。
4.みんな自分が通った道しか知らないし、それが正解だと思いたい
私は前述したようなことを考え抜きながら、自分のやりたいこと重視で、最終的には直感を信じる形で転職をしました。大切なのは、自分の価値を低く見すぎないこと、自分で選んだ道である、と思って生きることです。
私は転職推進派ではないですが、人材が流動することで労働環境、技術力ともに業界全体の底上げに繋がればよいと思います。建築設備業界で幸せに働く人が増えることと、業界が永続的に繁栄していくことを願っています。
※本記事の内容は筆者個人の見解であり、所属組織の調査研究に基づく公式な見解を示すものではありません。また、特定のサービスや商品のプロモーションを目的としたものでもありません。