構造設計の進め方|実務経験者が解説

構造設計の進め方|実務経験者が解説

#構造設計のイロハ

最終更新日:2026/05/13

沖原 圭佑

Fortec Architects株式会社

沖原 圭佑

大手建設会社に11年間、構造設計者として従事。工場・研究所・教育関連オフィス・ホテルなど、様々な建物種別に携わった。その後、ライティング技術を身に付けて建築ライターとして独立。建築・不動産・建設DXなど、幅広い建設・建築コンテンツの執筆を手掛けながら、ベンチャー企業の施工管理アプリ開発のアドバイザリー業務なども行っている。現在はFortec Architectsの構造エンジニア兼建築ライターとして活動中。

構造設計にはさまざまな進め方がありますが、今回は最も基本的な流れをご紹介します。実務のいろはとしてご覧になってみてください。

プランの確認

まずは意匠設計の基本計画図(プラン)を確認しましょう。その際、以下のポイントをチェックします。

・建物用途:住宅、オフィス、商業施設、工場、病院、学校など

・立地条件:地盤、海岸からの距離、建物の密集度、積雪量、周辺道路の状況など

・建物高さ、階高、スパン:寸法を確認しながら構造形式をイメージする

建物がどのような使われ方をするのか、どのような場所に立つのか、どのような空間になるのかを把握し、合理的な構造形式をいくつか考えておきます。

積載荷重の整理

次に、積載荷重を整理します。住宅やオフィスの場合は、建築基準法等を参考にすることで大きなズレなく設定できる傾向があります。一方、工場や倉庫、病院などは、非常に重い生産機械や保管物、医療機器等を設置するケースが多く、これらを適切に考慮した上で実況に応じた荷重条件を定めることが大切です。

荷重条件が変わると構造計算全体に影響を及ぼすため、早い段階で整理に着手し、建築主と合意を形成しましょう。建築知識がない方にとっては、スラブ・架構・地震用といった積載荷重の考え方がわかりにくいため、機器重量や部屋の使い方を丁寧にヒアリングした上で、伝わりやすい説明資料を用意する必要があります。建築主の理解が不十分だと、後になって変更が生じる可能性があるからです。

構造種別及び架構形式の検討

建築プランと積載荷重の整理ができたら、構造種別や架構形式の検討に移ります。これらの代表例は、以下のとおりです。

【構造種別】

・鉄筋コンクリート造:耐久性が高く、防音・防振性にも優れるが、ロングスパンが苦手。

・鉄骨造:ロングスパンを実現しやすい一方で、高強度材や複雑な架構を加工・製作するにはハイグレードのファブリケーターが必要。

・木造:木の温もりが人気、補助金を使いやすくなったことにより需要が増えているが、独自の構造技術が求められる。

【架構形式】

・ラーメン架構:柱と梁のみで構成される架構、自由度が高い。

・ブレース架構:地震力をブレースに負担させる架構、コストを抑えやすい。

・壁式構造:壁のみで構成される鉄筋コンクリート造の架構形式、安全性が高く計算が容易だが低層建築物のみが対象。

建築プランや積載荷重から、上記の特徴を踏まえて合理的な構造種別及び架構形式を検討します。最初から一つに絞るのではなく、ラーメン架構の検討をしながらブレースを追加してコスト削減効果を見るなど、柔軟に最適解を探していくことが重要です。

部材の断面算定

構造種別と架構形式が大まかに定まった段階で、部材の断面算定により仮定断面(ある時点の検討における部材断面)を決めていきます。この仮定断面は意匠設計や設備設計の納まり検討にも使われますので、断面算定がまとまった段階で共有し、変更が生じたら情報を更新するようにしましょう。

また、設計フェーズが進むにつれ、粗概算、精概算、清算(明細)といったコスト検討のプロセスがあります。必要に応じて仮定断面を関係部署に共有し、正しくコストを算出できるように連携を取っていきます。

意匠・設備設計、現場との調整

構造設計の実務で大切なのは、最新のプランと整合を取りながら進めることです。建築プランは建築主の要望を受けて常に変わっていくので、定例に参加したり設計部内の情報共有の場を設けたりすることで、最新情報を入手できるようにしましょう。建築プランが更新されたら、速やかに断面算定を修正して新しい仮定断面を共有することで、プランとの整合を取りながら調整できます。

 また、ゼネコンの場合、フロントローディングにより現場所長や施工計画担当者が早い段階で設計に関与する機会が増えています。施工を効率化する提案を取り込むことで、さらに合理的な計画にできるだけでなく、後の変更が少なくなりますので、積極的に協力しましょう。

構造図・構造計算書の作成、確認申請

構造計算が完了すると、いよいよ構造図や構造計算書といった成果物を作成していきます。構造モデル、構造図、構造計算書に不整合が生じないように留意しながら進めましょう。場合によってはこの段階の検討で部材等に変更が生じる可能性があります。並行して建築・設備設計も設計図書の作成を進めているはずなので、変更が生じた際は速やかに共有することが大切です。最近はBIM(Building Information Model)による三次元検証により建築・構造・設備の干渉チェックを行うケースもありますので、これらを活用しながら三者の整合を取っていきます。

構造図と構造計算書が作成できたら、特定行政庁もしくは指定確認検査機関に確認申請を提出し、建築許可が下りると工事に着手できるようになります。しかし、設計者としての役割が終わるわけではありません。着工後は、「設計者」兼「工事監理者」として、現場との調整による変更対応を行いながら設計図書のとおりに実施されていることを確認していきます。

おわりに

構造設計は複雑な業務ですが、適切な手順を踏むことで手戻りを少なくすることができます。建築プランが常に変化するので変更対応がなくなることはありませんが、荷重条件の変更といった致命的な修正をなくすことで着実に進められます。今回ご紹介したプロセスを一人でこなせるようになれば一人前です。初めは上司や先輩の力を借りながら進めていき、少しずつ自分でできる業務を増やしていきましょう。