
設備の実務に大事なのは「段取り力」 基本設計編
最終更新日:2026/03/05
株式会社日建設計総合研究所
村井絢香
大手建設会社にて設備設計(電気・機械)に7年、設備施工管理に3年従事。大規模病院、歴史的建築物の復興、放送局、大規模再開発等のプロジェクトを担当しながらZEB設計ガイドライン・設計ツールの社内開発にも携わる。その後スタートアップ企業に転職。設備部門の立ち上げを行い、事業主として設備PMおよび設備設計に2年従事。設計・施工・事業主の3つの視点を強みに、現在は日建設計総合研究所の研究員として環境・エネルギー分野の調査研究とコンサルティングを行っている。
建築設備界隈の皆様、毎日のお仕事お疲れ様です。皆様ご存知の通り、建築業界には様々なずらせない締め切りがありますね。見積、確認申請、工事請負契約、工事工程のクリティカルパス、諸官庁検査、竣工引き渡し、開業。あらゆる不幸が重なって締め切りに間に合わず、業務量が激甚化している方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はこういった不幸を極力発生させないために意識すべき「段取り力」に関してです。
1.段取りとは自分の仕事をバックキャスティングすること
「段取り」とは。辞書的には「事前に行動の順序や手順を計画することを指す言葉である」とのことですが、私の中では自分の仕事のバックキャスティングに基づいた、事前検討や手配という感覚です。
バックキャスティングになるのは、設備が工程の下流側だからです。具体的には、中央監視・自動制御設備の作図およびその施工が最下流になることが多いですが、それを各種マイルストーンに合わせたときに芋づる式に前工程のマイルストーンが決まっていく、そんな感覚を持っています。皆様はどうでしょうか?
2.制すべき取り合い点 基本設計編
設備の内部でも調整事項は様々ありますが、建築、構造との取り合い点を優先的に制すことで不幸を最小化できると思っています。今回は基本設計での代表的な調整事項と私の制し方を紹介します。
①建築図の発行と調整のスケジュール
兎にも角にも建築計画を早く正確に、必要な検討過程を経てFIXさせることがプロジェクト全体の平和につながります。ドラフト版の平立断発行時期、FIXさせる時期(設備の作図スケジュールからの追い出しによる)、建築主への提示はいつごろで、その間におさまり調整をどれくらいの頻度で行うのかを握ります。
ここで設備設計者が大切にしたいのは、多少の変更やミスには文句を言わず、建築設計と一緒に作り上げる共感力を持つということです。DSやEPSが全部梁の上にあっても、機械室がなくなっていてもすぐに怒らないように我慢して、彼らの作りたいものをまず理解するように心がけたいです。
どういうものが作りたくて、どういう形状にしたいからDSが梁の上になっちゃったのか。プランの中での優先事項は何なのか。その対話を踏まえて、設備を軽視したような振舞いや非科学的、非物理学的な持論を展開されたときには怒ります。こうすることで建築設計者のオープンマインドを促進するのが私の手法です。
物理的にできない、おさまらない事象も多く出てきます。「できません」だけだとあれやこれや検討させられるモードになりがちなので、「できません」とセットで「これならできます」を持っていくのも有効です。
②構造図の発行スケジュール
構造設計者にも計画を進めてもらわないといけません。梁伏や耐震壁の配置もさることながら、特に大梁成は天井懐のおさまりと階高にも影響します。概算後に階高を上げると建築工事費が爆増しますので、概算前に建築・設備との調整を終わらせておきたいポイントです。
これも①と同様に、ドラフトの仮定断面が出るのはいつで、いつまでにFIXさせたいのかを建築・構造・設備の3者同席の場で調整します。
構造設計者は多忙かつ合理的な人が多い(個人的調べ)ので繰り返し検討を嫌う場合も多く、「条件が決まるまで手を動かしません、打合せも出ません」のスタンスになってしまうとコミュニケーションが難しくなります。建築と設備の進捗状況を見ながら、最小限の労力でやってもらえるように考えてますよ、という気遣いを見せてチーム感を保つことが大切だと思っています。
また、設備室の㎡当たりの荷重条件や大型機器の吊り荷重などは設備設計から伝えるべき数値なので、こちらから用意しておくと喜ばれます。発電機室などシンダーコンクリートを全面的に打ちたい部屋の荷重も同様です。
③法的な閾値の押さえ
設備設計が得意で建築設計が苦手(というか興味がない人が多い)のが法規、特に消防法です。法規チェックをかける際に、各種面積(延床、各階)、消防法上の有窓・無窓と内装制限、構造方式(耐火・準耐火・その他)、は各種判断の基準になるので、勝手に判断せずに必ず建築設計から数字を出してもらうようにします。
そのうえで、消防設備の設定要件にぎりぎりかかる(かからない)ものがあれば、計画初期にアラートとして共有しておくとよいです。また、避難器具は建築工事であることが多く、その場合は建築設計の責任範疇になりますが、手が回っていない場合が多いので「必要になりそうだよ」くらいの耳打ちをしてあげる気遣いも有効です。避難器具をなくすためにプランが変わったりするので、設備の身を守ることにもつながります。また、排煙、有窓・無窓、内装制限など建築基準法と消防法を混同しやすいものは、そっとリードしてあげるとチーム感が高まります。
3.最後に
雨水排水計画、環境配慮計画(ZEB化、各種認証取得)、遮音計画などほかにも取り合い点は多々ありますが、いったん今回はここまでに留めます。「段取り力」とはマイルストーンを確実に押さえること基本としながら、情報の共有と気遣いによってプロジェクトを円滑に進めることだと思っています。
※本記事の内容は筆者個人の見解であり、所属組織の調査研究に基づく公式な見解を示すものではありません。また、特定のサービスや商品のプロモーションを目的としたものでもありません。