「全部できる必要はない」情シス・DX担当が一通り知っておくべきIT基礎知識|アプリ・ネットワーク・インフラ

「全部できる必要はない」情シス・DX担当が一通り知っておくべきIT基礎知識|アプリ・ネットワーク・インフラ

#情シス・DX推進担当のイロハ

最終更新日:2026/04/11

中島貴春

株式会社フォトラクション

中島貴春

ゼネコン勤務を経て建設テックスタートアップに参画。建設業向けSaaSの開発・導入支援に従事する中で、情シス・DX推進の現場を数多く見てきた。テクノロジーと建設業の架け橋として、業界全体のデジタル変革に取り組んでいる。

「アプリを自分で作れないといけないの?」「ネットワークの設定は専門家じゃないとダメ?」——そんな心配は不要です。情シス・DX推進担当に求められるのは、全部できることではなく、判断できること。アプリ・ネットワーク・インフラの基礎知識を「使う・発注する・評価する」視点で整理します。そして、何より大切なのはITへの興味と、自分で触ってみる姿勢です。

0.まず大切なのは「ITが好き」であること

知識よりも先に、これを言わせてください。情シス・DX推進担当として長く活躍している人に共通しているのは、ITに対する素直な興味・好奇心です。

新しいツールが出たら試してみたい。なぜこの仕組みで動いているのか気になる。そういった姿勢が、知識を自然と積み上げていきます。

また、自分で実際に触ってみることが非常に重要です。ドキュメントを読むだけでなく、無料トライアルを使ってみる、自分のPCで設定を試してみる。手を動かすことで初めて「なるほど、こういうことか」と腑に落ちる場面が必ずあります。

知識はあとからついてくる。まずは「触ってみよう」という気持ちを大切にしてください。

1.なぜ「一通りの知識」が必要なのか

情シス・DX推進担当の仕事は、自分で現場に展開するシステムを構築することは少ないです。ベンダーや社内エンジニアと連携し、現場の課題を技術で解決するための橋渡し役です。

しかし、技術の基礎知識がないと困る場面が必ず出てきます。

  • ベンダーの提案が本当に妥当かどうか判断できない
  • 「それは技術的に無理です」と言われたとき、本当に無理なのか分からない
  • トラブル発生時に、何を誰に確認すればいいか分からない

「全部できる必要はない。でも、話についていける程度は知っておく」——これが情シス・DX推進担当に求められる知識レベルです。

2.アプリの基礎知識

「アプリ」と一口に言っても、形態によって特徴が異なります。ここでは、使う側・選ぶ側として知っておくべき区分を整理します。

Webアプリ:ブラウザ(ChromeやEdge)で動くアプリです。インストール不要でURLにアクセスするだけで使えます。kintoneやGoogle Workspaceなどが代表例です。更新がサーバー側で完結するため、端末ごとのアップデート作業が不要な点が管理しやすい特徴です。

モバイルアプリ:スマートフォンやタブレットにインストールして使うアプリです。建設現場での写真撮影・報告に使われる施工管理アプリの多くがこれに当たります。オフライン環境でも動作するものが多いのが強みです。

SaaSとオンプレミスの違い:アプリの「提供形態」の話です。SaaS(Software as a Service)は月額・年額の利用料を払って使うクラウド型のサービスで、自社でサーバーを持つ必要がありません。オンプレミスは自社のサーバーにインストールして運用するもので、建設業の基幹システム(工事管理・会計)に多く見られます。カスタマイズ性は高い反面、サーバーの維持管理コストがかかります。

ツール選定の際は「SaaSかオンプレか」が費用・管理負荷に大きく影響するため、この違いは押さえておきましょう。

3.ネットワークの基礎知識

ネットワークの設定は専門家の仕事ですが、概念を知っておくことで「何が起きているか」を理解できます。特にトラブルの時に役に立ちます。

LAN(ローカルエリアネットワーク):オフィスや現場内など、限られた範囲をつなぐネットワークです。有線(LANケーブル)と無線(Wi-Fi)があります。現場事務所のWi-Fiがこれに当たります。

WAN(ワイドエリアネットワーク):離れた拠点間をつなぐネットワークです。本社と支社、オフィスとインターネットをつなぐのがWANです。インターネット自体も巨大なWANと言えます。

VPN(仮想プライベートネットワーク):インターネット上に暗号化された「専用トンネル」を作る技術です。在宅勤務や現場からの社内システムへの安全なアクセスに使われます。「VPNにつないでください」という指示を受けたことがある方も多いはずです。

クラウド:インターネット経由でサーバーやストレージ、ソフトウェアを利用する仕組みです。AWS(Amazon)、Azure(Microsoft)、GCP(Google)が三大クラウドです。「クラウド移行」とは、自社サーバーで動かしていたシステムをこれらのサービスに移すことを指します。

4.インフラの基礎知識

インフラとは、アプリが動くための「土台」です。直接触る機会は少ないですが、概念を知ると会話がスムーズになります。

サーバー:データやアプリを提供するコンピュータです。物理的な機械(オンプレミス)か、クラウド上の仮想サーバーかの違いがあります。「サーバーが落ちた」=アプリが使えない状態、と理解しておけば十分です。

データベース(DB):データを整理して保存・検索できる仕組みです。顧客情報・工事情報・在庫データなど、業務システムのデータはほぼすべてデータベースに入っています。「DBのバックアップ」の重要性は、情シス担当なら必ず意識してください。

API(エーピーアイ):システム同士がデータをやりとりするための窓口です。「AのシステムとBのシステムをAPI連携する」とは、自動でデータを受け渡しできるようにすることを指します。手入力の二重作業をなくす手段として、建設業DXでも注目されています。

5.知ったかをしない。相手の言葉で話す。

最後に、技術知識と同じくらい大切なことをお伝えします。

知らないことは「知らない」と言う。これが情シス・DX担当として信頼を積み上げる一番の近道です。中途半端な理解で話を進めると、後から大きな問題につながります。分からなければその場で確認する、専門家に聞く。この姿勢を大切にしてください。

そして、相手に応じた言葉で話すこと。建設業において、情シス・DX推進担当は会社の中でも人数が少なく、いわば脇役です。現場の職人さん、設計担当者、経営層——それぞれITリテラシーも関心も違います。「APIで連携して」「クラウドに移行して」と言っても伝わらない相手には、「別々のソフトを自動でつなげる」「インターネット上のサービスに切り替える」と言い換える。

技術を知っているだけでなく、それを分かりやすく伝えられる人が、現場から頼られるDX担当になれると思います。

※本記事の内容は筆者個人の見解であり、所属組織の公式な見解を示すものではありません。また、特定のサービスや商品のプロモーションを目的としたものでもありません。